井嶋ナギの日本文化ノート

「超歌舞伎」初体験! もしくは、「歌舞伎の原点」を体感できるパワフルなお祭り空間!

今年2019年4月28日、「超歌舞伎」を初体験してきました! 

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超歌舞伎」、ご存知でしょうか? 「ニコニコ超会議」で開催されるイベントのひとつで、ボーカロイドの超人気キャラクター・初音ミク嬢と、歌舞伎役者・中村獅童丈によって演じられる、最新CGデジタル技術を駆使した新たな歌舞伎作品です!

…と、偉そうに書いている私、「超歌舞伎」をよくわかっておりませんでした(笑)。古典芸能ファンにありがちかもしれませんが、「江戸や明治を体感したいから歌舞伎を見るのであってー、だから歌舞伎作品も古典ものが好きなの」みたいな。まぁ、私もある意味、そういうところがありまして。というか、最近もう、歌舞伎公演が多すぎて、古典の舞台を追うのだけで精一杯で…(泣)。新しい試みにまで手が(というか、おカネが、時間が)まわらない。そんな感じで、「超歌舞伎」が話題であることも知っていたのですが、とくに見に行ってはいませんでした。

ところが。見に行ってみてビックリ。あ、最初に結論を言うと、「素晴らしくパワフルで面白くて、いやー、興奮した! また行きたい!」でした。

それどころか、ある意味、「これぞ、歌舞伎の原点なのではないか?」とまで思わされました。

というわけで、初音ミク嬢のこともニコニコ超会議のこともよく知らなかった、そんな、単なる「いち歌舞伎ファン」の私が、「超歌舞伎」を見てどう思ったか? 超歌舞伎見てきたよー、の巻です。 (添付画像は、会場で撮影したものと、ニコ動生放送でキャプチャーしたものと、両方を使っております)


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1.「歌舞伎の原点」を体感できる!


まず、いち歌舞伎ファンが一番興奮したこと。それは、何よりも「掛け声、カケホーダイ」だということです! 生まれて初めて「よろずやー!」と掛け声をかけた楽しさといったら(笑)。歌舞伎ファンの方なら、わかっていただけますよね? 女性が歌舞伎座で掛け声かけるなんて、なかなかできませんし(まぁ、先月の猿之助丈の『黒塚』の時はわりと女性の声が飛んでいましたが)。男性だって同じですよ、うかつにヘンな間で、ヘンな掛け声なんかしようものなら、即効、twitterに「今日の掛け声なにあれ」「今日の掛け声ひでーな」と書き込まれますからね…。

しかし、会場の皆さんのノリノリ具合といったら、「ろずやッ!」なんてそんなシブいものじゃありません、「よろずやぁぁああー! よろずやぁぁぁああああー! うおぉぉおおー!」という感じ。昔、大宮ルミネかなんかで、アイドルの店内イベントかなんかにうっかり遭遇し、地鳴りのような低音が床から響いてきてド肝を抜かれたことがありましたが、まぁ、そういう感じ(違うかも)。

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そして、それに応えるかのように、いや、それをさらにさらにエスカレートさせるべく、獅童丈が煽る! 煽る! 煽りまくる!!!(笑) あの煽り方は、まさに、そう、ロックスター! 獅童丈による会場内のボルテージの盛り上げ方がとにかく巧みで、堂に入っていて、さすが「中学時代から40歳半ばに至るまでずっとロックバンドやってきた男」は違うなーと、心底感心してしまいました。あれは、ほかの歌舞伎役者には、ちょっと勤まらないのではないのではないでしょうか? やはり、「中学時代から40歳半ばに至るまでずっとロック魂を燃やし続けるウザいほどアツい男」でなければ!!!

しかも、観客の皆さんが、ペンライトをわーっと揺らして、会場を盛り上げるのですね。暗闇のなかで揺れる無数のライトが、とっても綺麗で、幻想的で…。私もペンライトほしかったんですが売りれてしまったので、iphone を持って揺らしました(笑)。

しかも、最後のほうは、全員総立ちで、ペンライトを両手に1本ずつ(要は合計2本)もった観客たちによる見事に統一された踊り( ヲタ芸?)まで発生。というか、この人たちが1人で2本も買っちゃったから、私のぶんがなかったのだな…。次回「超歌舞伎」に行かれる方、ペンライト購入はお早めに。

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そんなわけで、歌舞伎座では絶対にできないことも、「超歌舞伎」では、できちゃう。そして、ある意味、「これこそが、歌舞伎の本来の原点なのではないか?」と思ったわけです。

思うに、江戸時代の歌舞伎もそういうものだったはずですよね。踊りやら芝居やらを見せるスターに、熱狂した観客が「まってましたっ!」「なりたやぁー!」と声をかけずにいられなかったようなもの、だったはずですから。

あ、もちろん、「過去の歌舞伎に戻るべき」と言ってるわけではありませんよ? ただ、そんな「歌舞伎の原点」を体感できるこんな公演も、楽しいなぁ、面白いなぁ、と。歌舞伎ファンとして、素直にそう思いました。



2.CG映像で「見たことのない歌舞伎映像」が見られる!


それともうひとつ大事なこと。それは、CG歌舞伎映像体験が、想像以上に楽しい! ということ。

まずですね、オープニング、超絶カッコイイ! 今回の『今昔饗宴千本桜(はなくらべ せんぼんざくら)』、オープニングはなんと大正時代の街を駆けめぐる列車線路から始まり、見ている者はまるで高速ジェットコースターに乗せられて街を疾走するかのようなヴァーチャル体験を味わいつつ、線路はそのまま空へと、高く高く、駆け上がる! …まるで『銀河鉄道999』のような胸アツ展開の後に、キャメラは大正ロマンなミルクホールへと突入、そこでは、初音ミク嬢が踊りながら皆さんをお出迎え、さあ、始まるよ! …というなんとも興奮なオープニングに、心つかまれまくりでしたね(999世代のため…)。

また、今回のこの「超歌舞伎」では、『義経千本桜』のおなじみの登場人物である佐藤忠信が(中村獅童)が龍と戦うシーンがあるのですが、このシーンはCGで制作されていまして。なんと、忠信と龍の戦いを、ローポジション・ローアングルから、またはハイポジション・ハイアングルから、さらにはキャメラがグルグル回ったアングルで、見ることができるという、まさに「超・歌舞伎」な体験! いやー、面白かった。通常の歌舞伎では、どんなに良い席をゲットできたとしても、歌舞伎を、下から、上から、もしくは回りながら、見ることなんてできませんから(笑)。まさに、CGならでは。

で、その忠信と戦うCG龍が、めちゃくちゃカッコイイ。シルバーに冷たく光るギーガーチックな龍。この龍だけが、機械の体をした龍なんですよ! 銀河鉄道999でいう「機械の体」を手に入れやがった野郎なんですよ! しかも体がやたらと長い!!! 生理的にゾワッとくるカッコよさ…と思ったら、デザインされたのはなんと、『ウルトラマン』等の怪獣デザイナー井口昭彦さんとのこと(本作のディレクターがその娘さんにあたる高橋玲香さん、というつながりにて)。さすが。


そして、忘れてはいけないのが、ミク姫の可憐な踊り!

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CGなのに、全然上達しない私より百万倍上手い! …って当然です(笑)、実は、実際に(データ上で)踊っているのは藤間流宗家・藤間勘十郎さんですから! 勘十郎さんの素晴らしい踊りが、何の違和感もなくミク姫の踊りに転換されていて、踊り好きとしてはたまりませんでした。余談ですが、この技術、踊りの稽古ツールなんかに応用できないものかしら…なんて…(お手本の踊りと自分の踊りが、座標でどれくらいズレているのかが分析できると、稽古に役立ちそう)。


また、獅童丈による、古典歌舞伎ではおなじみの梯子を使った立ち回りも。こういうところは、古典芸能○百年の積み重ねのすごさを感じますね…。

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澤村國矢さんの、青隈が禍々しい悪役っぷりも、とても素晴らしかった。何と言っても、カーテンコールで披露された國矢さんの毛振り! いいぞいいぞー! やったれやったれー! と応援(笑)。

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そしてクライマックスは、ニコ動の象徴ともいえる「コメント」の嵐、そしてそのコメントによって、とある「奇跡」が訪れる。「ニコニコ動画の世界」と「リアルの会場」が、つながる!!! …という感動。

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光と、音と、CGと、アクロバティックなアクションと、伝統芸能としての古典歌舞伎と、ニコ動のコメントと、そして観客、すべてが渾然一体となった、「お祭り」としか言いようがないカオスっぷり、歌舞伎ファンもそうじゃない人も、ぜひ体験すべき。ほんと、楽しかったです!

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3.私もちょっぴり協力させていただきました!


で、余談ですが、実は私も、ほんのちょっぴりだけですが協力させていただきました。今回のミク嬢は「お姫様」という設定だったので、衣装設定などですこしアドバイスをさせていただきました(こうしたお仕事も承っておりますー!と、ここで宣伝)。

そして、「衣装撮影協力 井嶋ナギ」とクレジットも入れていただき、感激です。やっぱり、撮影するよね…(すみません)。

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それから、この画像だとあまりよく見えないのですが、ミク嬢の象徴「ツインテール」と、お姫様の髪型である「吹輪」がしっかり可愛く融合しているんですよ! ここ、個人的にかなり好きです。

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これは超会議の、別の会場に出ていた「ミク山車」。ここでのミク嬢は芸者に扮して、みなさんに手を振っています。「どうぞご贔屓に〜」。

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で、このミク姐さんの、帯、に注目!!! 芸者の定番である「博多献上帯」の、柄をよーく見てください。

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わかりますでしょうか? なんと、博多献上帯の獨鈷柄が「ニコ動」マークになっている! 細かいっ! 実は、「超歌舞伎」のディレクターを毎年つとめていらっしゃる高橋玲香さんが、自由学園明日館で開催した拙講座(コレ)にいらしてくださり、このアイディアを思いついたんだそうです。こういう細部の「分かる人には分かる」こだわりの遊び、最高ですねー。




そんなわけですが。なんと今年の8月、改修が終わったレトロゴージャスな劇場「京都南座」にて、「超歌舞伎」が上演されるそうです! 演目は、今年のこの『今昔饗宴千本桜(はなくらべ せんぼんざくら)』と、新作『お国山三 當世流歌舞伎踊(いまよう かぶきおどり)』。

私のような純粋な歌舞伎ファンも楽しめると思うので、ぜひ思い切ってトライしてみてください! 最先端技術と融合した、真夏らしいお祭りイベントとしても、大変オススメです!

chokabuki.jp



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【日本を知るための100冊】008:『孤獨の人』 〜皇太子と学習院クラスメイトの孤独を描いた、隠れた傑作文学

ついに平成が終わり、令和になりました。というわけで、しばらく放置状態になっていたブログを、再開させようと思っています。

ここ数日、平成の明仁天皇(本日からは明仁上皇)関連の番組が連日放送されていましたが、私はそうした番組を横目で見ながら、この小説を再読していました。

孤獨の人』藤島泰輔・著(岩波現代文庫)

『孤獨の人』藤島泰輔
この作品は、「明仁皇太子をめぐる、学習院内部の男子生徒たちの心の揺れ」を繊細に描いた、大変珍しい小説です。

発表されたのは、今から63年前の1956年(昭和31年)。当時はゴシップ的側面が主にクローズアップされ、映画化もされましたが、今ではもうあまり取り上げられることもないようです。が、とんでもない。今でも読まれるべき、いや、令和になったからこそ読まれるべき本だと思います。これ。


まずは、以下の点からも、今読まれるべきだと思うのです。

■まず、純文学として野心的で、格調高いこと。

■著者の藤島泰輔氏は、実際に、学習院での明仁皇太子の「ご学友」だったこと。

■明仁皇太子を美化することなく、「一人の若者」として描いていること。

■「神」から「人間」になった皇族をどう受けとめていいのか、という「迷いや混乱」が描かれていること。

■戦後の転倒した価値観のなかで、戸惑う人と、戦前の価値観に戻る人(逆コース)、が描かれていること。

■いわゆる「スクールカースト問題」が描かれていること。

■序文は、三島由紀夫

■著者の藤島泰輔氏は、ジャニーズ事務所副社長のメリー喜多川氏の夫であり、 藤島ジュリー景子氏の父親であること。


などなどでしょうか。つまり、「文学としての格調高さ」と「当時の時代相」と「ゴシップ」とが渾然一体になって詰め込まれている、なかなかない稀有な作品だと思うのです。

あ、ゴシップというのは、決して悪い意味で使っていません。小説というジャンルは古今東西、ゴシップという材料をつかって、人間特有の好奇心をバネにして、それをはるかに超えた理解や感慨を生み出す作品に満ち満ちているものなので。ゴシップは、決して悪いものではないと考えます。



皇太子を中心にした、スクールカースト学園恋愛小説


この作品で描かれる、戦後すぐの学習院内部ソサエティのルールは、ただひとつ。「宮(皇太子)と親しくなった者が、そのコミュニティの支配者になれる」というもの。「スクールカースト」という言葉が定着した現代日本においては、わりと理解しやすいルールではないでしょうか。

だけど、ルールに完全に従順な者や、ルールに最初から興味のない者は、ある意味でラクなんですよね。身のふり方に迷いはありませんから。そこで一番困るのは、「本当はそのルールに従って勝者になりたいのだけど、プライドや恥ずかしさや恐れから、そのルールに背を向けてしまい、苦しむ」という、アンビバレントな心理状態に陥ってしまう場合。アルアル、です。アルアル過ぎて、心が痛い(笑)。そしてこの小説の主人公・吉彦は、まさにこのタイプでした。

吉彦は、中等科から学習院に入った生徒。実業家の息子でお金持ちだけど、学習院のなかでは「外様」です。

ちなみに、当時の学習院内のカーストについて言えば、当然ながら、中等科から入った生徒より、初等科から入った生徒のほうがエライし、初等科から入った生徒より、幼稚園から入った生徒のほうがエライ。また、戦前に爵位をもっていた華族出身のほうが、平民出身者より、エライ。

そんな身分制のなか、自分が不利なスペックの持ち主だった場合、人はどのように振る舞うものでしょうか? おべっか使ってでも他人から笑われても、成り上がってやる! とガツガツ行動するか。そんなみっともない真似するくらいなら、別にその他大勢で構わんよ、と知らんふりするか。人には自尊心がありますから、大半の人は後者でしょうね。

本作の主人公・吉彦もそうでした。それどころか、ご学友メンバーに入らないか?という狂喜すべきお誘いがあったのに、「俺はいやだよ。殿下とつきあうの」と突っぱねる始末…。そのくせ、宮が気になって気になってしかたがない。気になるのに、ツンツンする。好きなのに、嫌いなそぶりをする。ああ、これは完全に恋愛小説の典型的パターンではないですか…。

もちろん、吉彦だけではありません。宮(皇太子)をめぐって、大半のクラスメイトが、否応なしに何らかの反応を迫られる。積極的に行動する者、全く無視する者、アンビバレントな心理に苦しむ者、等々…。


と、このようにギリギリと歯噛みする生徒たちの真ん中で、この宮という若者は、一体何を考えているのか? 彼の行動は? 彼の考えは? 彼の願望は? 彼の意志は? まるで台風の目の中心のように静かで孤独で、そこには「無」しかないようにも見える…。

貴様は、やはりあのひとの孤独の恐怖を甘く見ているんだ。諦めることによって救われる程度のものだと思っているんだ。
俺達は殿下をいまの状態なりに人間性の開放に持って行くようにするんだ。


戦前のように「神」ではなく、自分たちと同じ一人の「人間」として、宮(皇太子)を愛しはじめた「戦後の若者」である生徒たちは、その宮のおかれた場所の静けさに恐怖し、同情し、苦しみ、そして(教師や侍従や太夫の意向に抗って)なんとか宮を救えないものか、とさえ考え始めるのです。



銀ブラ事件と、民衆の熱狂と、青春の挫折


ところで、先日、NHK「アナザーストーリーズ」の明仁天皇特集を見ていたら、明仁皇太子の高校時代に「銀ブラ事件」なるものがあった、ということが放送されていました。

明仁皇太子がご学友2人と、こっそり夜の銀座に出かけるという「大冒険」を決行、宮内庁職員が慌てたという「銀ブラ事件」です。

アナザーストーリーズ アナザーストーリーズ
この銀ブラ事件は、小説『孤獨の人』にも重要なエピソードとして登場します。もちろん、あくまでも小説なので、事実とは異なる部分もあるとは思いますが。(詳細は上皇明仁wikiにも掲載されています→コチラ

だけど、一度だけでいいから誰にも干渉されず自分の意志で行動してみたいという宮(皇太子)の強い願望があったこと、そして、後で職員から叱責されるのを承知で、宮の願望を叶えるために尽力してあげたいと考えたご学友がいたこと、はまぎれもない真実でしょう。

そして、山手線に乗っても乗客に気づかれていないとわかり、宮が楽しそうに微笑んだこと。また、帰宅後、協力したご学友が、ほかのクラスメイトから僻むような言葉を受けたこと。職員からこっぴどく叱責されて、こらえきれずに号泣したこと。そうしたエピソードにおける若者たち一人一人の心の微妙な揺れが伝わってきて、昭和20年代の学習院の男子生徒たちとは何の関係もない、令和元年に生きる単なる庶民(私)の心を震わせるのです。


さらに、この小説の白眉は、第5章。

修学旅行で仙台を訪れた宮や吉彦たち、学習院生徒一行は、その地で「皇太子殿下! 万歳! 万歳! 万歳!」という民衆の大群とその熱狂に、モミクチャにされます。さらに吉彦は、純粋そうなあどけない海軍の乗組員青年から、なんの悪意もなくこのような羨望の言葉をかけられるのです。

ーー幸福ですね。貴方がたは。選ばれた、何人かの、日本の中での、幸運児ですね。

ーーぼくは昔から、ああいう地位の方に憧れを持っていたんです。新聞やなんかで写真を拝見する時、よく考えたものですよ。一度、一日でいいからああいう地位になってみたいってね。


戦争が終わり、天皇が神から人間になり、民主主義になってまだ数年なのに(この小説が描かれているのは1951年あたり)、やはり、皇族を神格化して熱狂せずにはおれない日本の現実

そのことにより、否が応でも孤独の世界に閉じ込められてしまう宮と、宮の心に触れることができず寂しく孤立する生徒たち

それぞれの若者たちの、切ない青春の挫折を描いた小説が、『孤獨の人』なのです。



令和だからこそ、「昭和20年代の学習院生徒たちの青春」をしみじみ味わえる


ちなみにですが、一説では、ある意味で非人間的な監禁生活を余儀なくされ、陰々滅々としていた明仁皇太子を救ったのは美智子様だと言われています。1957年に出会い、1959年にご結婚されました。

それが真実だとしたら、「孤獨の人」は、ついに孤獨ではなくなった、のかも…しれません。


退位礼正殿の儀の天皇陛下のお言葉
平成31年4月30日

今日(こんにち)をもち、天皇としての務めを終えることになりました。

ただ今、国民を代表して、安倍内閣総理大臣の述べられた言葉に、深く謝意を表します。

即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します。明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります。



昨日、このお言葉を述べる明仁天皇をテレビで拝見し、令和になった今こそ、この『孤獨の人』が読まれるべきなのでは、と思いました。

なぜなら、この小説は、60年前に「将来の天皇」という重い荷を背負わされたゆえに孤独を味わわねばならなかった若者と、その周囲の若者たちの、青春の物語だから。そしてその人は、やっと、その重い荷をおろされたのですから。

もちろん、孤独というものは人間である以上、生涯ついてまわるものでしょう。皇族であれ、庶民であれ、孤独から完全に開放される、ということは永遠にない。ということは一言つけ加えておきたいと思いますが、それはまた、別のお話。






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2019年も開催します!早稲田大学オープンカレッジ講座「人物像で読み解く 江戸キモノファッション文化史」のお知らせ

花魁 英山


春のお知らせです!
今年2019年も、早稲田大学オープンカレッジで講座を開催します!

  今年は、「江戸時代キモノ」基本中の基本を、参加しやすい4回講座にコンパクトに凝縮しました! 4つの女性像「花魁」「芸者」「」「」それぞれのキモノファッションについて、彼女たちのライフスタイルと歴史的変化を絡めつつ、お話する予定です。

江戸好きな方歴史好きな方歌舞伎や浮世絵がお好きな方、そしてキモノ好きの皆様、ぜひお気軽にご参加くださいませ。




人物像で読み解く「江戸キモノファッション文化史」
   〜花魁、芸者から、町娘に年増まで〜


【日程】5/11(土)、5/25(土)、6/8(土)、6/15(土)
【時間】13:00~14:30(90分)
【場所】早稲田大学エクステンションセンター
    中野校キャンパス →MAP
    (JR中央線、JR総武線、メトロ東西線 「中野駅」徒歩10分)
【定員】40名(上画像で定員25名とありますが、お申込み多数のため定員が増えました!

【目標】
・江戸時代の「着物のルール」や「歴史的変遷」を知る。
・歌舞伎、舞踊、浮世絵、文学、映画などをより深く理解できる。
・実際のキモノの着こなしにも役立てることができる。

【講義概要】
着物が日常着であった江戸時代、身分や職業、年齢などによって装いに差異・特徴があるのは当然のことでした。そんな江戸時代の「装いのルール」や「歴史的変遷」について、具体的な「人物像」(花魁、芸者、町娘など)を設定し、その人物の「ライフスタイル」もお話しながらわかりやすく解説します。
また、浮世絵、歌舞伎、日本舞踊、映画、文学などの諸芸術における「装いの描かれ方」について、さまざまな資料を使って、楽しく理解していく予定です。

【各回の講義予定】
5/11 花魁 〜吉原を中心に、遊女たちの様々な装い
5/25 芸者 〜「粋」を体現する女たちと、その歴史的変遷
6/08 町娘・姫君 〜町人の娘と武士の娘、子ども時代の装いも含めて
6/11 女房・年増〜 大人の女たち、そして江戸と上方の違いについて

江戸キモノ講座
→講座概要ページはコチラ

※ 基本の講座なので、これまで受講したことがない方でも大丈夫です!


【受講費】
早稲田大学オープンカレッジ会員の方 11,664円
早稲田大学オープンカレッジ会員ではない方(ビジター) 13,413円

【早稲田大学オープンカレッジ会員について】
・会員の有効期限は、入会年度を含めて4年度間(3月末日まで)
・入会金8,000円(税込)
・入会金6,000円の特例(過去に受講されたことのある方、早稲田大学オープンカレッジ会員・早稲田大学卒業生・早稲田大学在学生父母からの紹介、早稲田大学卒業生、東京都新宿区・中央区・中野区に在住・在勤の方、ほか)
・入会金無料の特例(早稲田大学・系属校の在学生、早稲田大学・系属校の在学生父母、ほか)
・会員特典あり(早稲田大学中央図書館が使用できる!、など)。
・会員について詳細は、コチラコチラを御覧ください
・会員にならずに、ビジターとしての受講も可能です
・ビジターについては、コチラを御覧ください

【申込方法】Web、Tel、各校事務所窓口にて受付中
・お申込み方法については、コチラを御覧ください


「江戸時代のキモノルール」を知ると、浮世絵が10倍深く楽しめる!


早稲田大学エクステンションセンターでの講座も、今年でなんと、6年目になりました…! 毎回、切り口を変えて(歌舞伎、映画、文学、泉鏡花などなど)開催してきましたが、今年は「江戸のキモノファッション基本の基本の基本」というコンセプトで、回数も少なめの4回講座にギュッと凝縮して開催します!


で、突然ですが。ここ数年、浮世絵ブームと言いますか、5年ほど前などに比べると、格段に「キモノやファッションやお洒落という視点で、浮世絵を見る」という企画展が、急に増えたように思いませんか?

そんな時に必要になるのが、この「江戸のキモノファッションのルール」という知識、です! この知識があれば、それが無かった時に比べて、浮世絵を10倍は深く楽しめる&理解できるようになります(当社比)。

そもそも私が、10年以上前から、ずーっと「江戸時代のキモノファッションのルール」について本を書いたりブログを書いたり喋ったりしてきたのは、浮世絵、歌舞伎、日本舞踊、江戸文学、近代文学、時代ものの映画……などを深く理解し味わうために、私自身がそうした知識をノドから手が出るほど必要としたから、でした。

もちろん、浮世絵を見てただ「キレイねぇ」と感動することは可能だし、それを否定するわけでは、勿論ありません。でも、「これは吉原の花魁だな、しかもこの装いはおそらく寛政期頃だろう」とか、「これは若い女の子に見えるけど、この髪型だから実は年増を描いているんだろうな」などなど、その浮世絵が「何を描いているのか」がハッキリわかったほうがもっと楽しめるはずですよね。

それは、歌舞伎や、時代もの映画を見るときでも、同じです。「あれ? 現代と違って、あの女の人は帯を前で結んでる。当時の流行かな、それともあの人の趣味かな」と思う方もいるでしょう。でも実は、女性の帯の前結びは、流行ではないし、個人的趣味でもない。それは、当時のキモノのルールであり、そこには「意味」があり、その後ろには「歴史」があるのです。


江戸時代には、そうした細かなルールがたくさんあります。が、それらを一つ一つ知ったとしても、それは単なるトリビアに終わってしまい、あまり役には立たないでしょう。なぜなら、そうしたルールは、さらに、時間軸に沿って変化していくからです。

よく考えればわかりますが、江戸時代だけで270年もあります。例えば、元禄時代の吉原の遊女と、文政期の吉原の花魁は、まったく装いが違うんですね。テレビなどでよく一口に、「江戸時代の遊女はこうでした!」と言ってしまうのを耳にしますが、それはちょっとザツすぎるなぁ…と(笑)。

というわけで、私の講座では、「歴史的変遷」という時間軸を、もの凄く、大事にしています。「それぞれの装いが、時間軸に沿って、どのように変化して、近代にまでたどり着き、そして現代のような形になったのか? その経緯や、如何に?!」…というわけなのですが、どうでしょう、結構、スリリングかつサスペンスフルな内容だと思うのですが(笑)。


「江戸時代のキモノルール」を知ると、現代キモノが10倍深く理解できる!


そして、さらに言えば、「江戸時代のキモノルール」という知識は、実際の現代のキモノライフにも、かなり役に立つ! と私は思っています。その知識がない時に比べれば、現代のキモノを10倍は深く楽しめる&理解できるようになります(当社比)。

なぜなら、江戸時代のキモノと、現代のキモノは、かなり変化しているとは言え、やはり「地続き」だから。

というのも、「なんで?」「変なの!」と思ってしまうことも多々ある「現代のキモノルール」ですが(笑)、江戸時代のキモノルールを知ると、「あー、そういう歴史があって、この現代のキモノルールができたのか! なるほどね!」と、膝を打つことが多いんです。

つまり、「そのルールはそもそもこういう歴史的経緯があってこうなったわけだから、つまり『本質』はこれこれにある、と。だから、現代に生きる私はこう解釈して、実際はこうすることにしよう」と、冷静に判断して、自信をもって自分なりの選択をすることができるようになる。

そうなるとどうなるかってぇーと(にわかに江戸弁)、「江戸時代のキモノルール」を理解していれば、「現代のキモノルール」に対して、「日本古来のルールは絶対だ!伝統は守るべき!」と無闇にルールを信奉して老害扱いされることもなくなるし、逆に「そんな意味不明ルールは守る必要ない!オレ流にやる!」と無闇に自己流で突っ走ってコケることもなくなる(笑)。いいことづくめですね(笑)。

そして、昨今、「日本ブーム」「和ブーム」とやらで日本ネタは話題になりがちで、勢い、「お直しおばさん問題」とか「伝統を守るべきだ、いや、現代流で何でもありだっていいじゃないか、論争」みたいなものにも遭遇しやすいのですが、そんな時にも、ある程度は、距離をもって対応できるようになる。


私は個人的に、何を思考し判断するにも、「知識」と「理解」という「基本の土台」が必要不可欠だと思っています。それナシで物事を判断することは、単なる思い込みや偏見や願望の要素が大きくなりすぎて、あまり知的な態度だとは言えません。キモノにおいても、しかり。そうした「基本の土台」をしっかり作れるような、そんな内容の講座にしたいといつも思っています。

…と、ちょっと硬くなってしまいましたが、、講座ではいつも、浮世絵や美人画などの美しいヴィジュアル資料を見ながら、時には、歌舞伎や映画などの映像もまじえて、多角的に楽しく理解していけるような内容にしております。キモノ初心者の方も、男性の方ももちろん大歓迎です!


あ、あと、ひとつだけ。最近知ったのですが、早稲田大学オープンカレッジ会員になると、なんと、早稲田大学の中央図書館が使用できます!(貸出は不可ですが) これ、もの凄い特典だと思います。早稲田大学の図書館には、普通の図書館ではお目にかかれない、貴重な資料や本がたくさん所蔵されているので…。いや、ホントに。これだけでもお金を払う価値があると、私は思います。余計なお世話ですが…。


というわけで、土曜の昼下がりの90分、皆さんと楽しい時間を過ごせれば嬉しいです! ぜひお気軽にご参加くださいませ。



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「人物像で読み解くキモノファッション文化史 Ⅰ
   〜花魁、太夫から、町娘、お姫様に悪婆まで」

「人物像で読み解くキモノファッション文化史 Ⅱ
   〜芸者、御殿女中から、江戸の色男、近代のモダンガールまで」


2017年
「人物像で読み解く江戸キモノファッション文化史 Ⅰ
   〜〜花魁、太夫から、町娘、お姫様に悪婆まで」

「人物像で読み解く江戸キモノファッション文化史 Ⅱ
   〜芸者、御殿女中から、江戸の色男、そして近代における変化まで」


2018年
「キモノファッションを読み解く
   〜泉鏡花と美しい女たちをめぐる、明治大正キモノ世界」



  

2018年も開催します!早稲田大学オープンカレッジ講座「キモノファッションを読み解く 〜泉鏡花と美しい女たちをめぐる、明治大正キモノ世界」のお知らせ

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今年は桜の開花が早いですね! というわけで、春のお知らせです。

今年2018年も、早稲田大学オープンカレッジで講座を開催します! 今年の企画はなんと、「泉鏡花とキモノ」ですよ〜〜〜! 鏡花ファンの皆様、近代文学ファンの皆様、鏡花読んだことないよーという皆様も、そしてキモノ好きの皆様はもちろんのこと、ぜひぜひご参加くださいね。

ちなみに、毎年、春と秋に講座を行っておりましたが、今年は春だけの開催になります(秋講座はありません)。回数も3回と、例年より少なめなので、お気軽にいらしてくださいませ♪


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キモノファッションを読み解く
   〜泉鏡花と美しい女たちをめぐる、明治大正キモノ世界


【日程】5/19(土)、5/26(土)、6/9(土)
【時間】13:00~14:30(90分)
【場所】早稲田大学エクステンションセンター
    中野校キャンパス →MAP
    (JR中央線、JR総武線、メトロ東西線 「中野駅」徒歩10分)

【目標】
明治から昭和にかけて活躍した文豪、泉鏡花。鏡花作品の魅力のひとつと言えるのが、「登場する美しい女(ひと)のキモノファッションについて事細かに描写されている」ということ。しかし、当時の「装いのルール」を知らない現代人には、理解するのが難しいのも事実です。そんな「装いの描写」を中心に、ヴィジュアル資料を用いつつ、鏡花作品を読み解きます。華麗かつ魔力的な鏡花世界を一緒に堪能してみませんか?

【講義概要】
泉鏡花の作品を取り上げて、「明治大正時代の装いのルール」を解説し、当時の服飾状況の理解を深めていきます。また、江戸時代の文化文芸を愛した鏡花ならではの「江戸趣味」や、近代に息づく「江戸時代の装いのルール」についても言及します。テキスト資料のほか、ヴィジュアル素材(映画、歌舞伎、美人画、当時の婦人雑誌、着物資料など)を用いて、分かりやすく多角的に、近代の装いと鏡花作品を理解していく予定です。

【各回の講義予定】
5/19 鏡花における「美しい女」とは? 明治大正期の着物ファッションの状況を背景に
5/26 貴婦人、女学生、下町娘に、幽霊 …さまざまな女たちのお洒落 〜『婦系図』『春昼・春昼後刻』ほか
6/09 遊女、芸者 …花柳界の女たちと、鏡花の江戸趣味・粋好み 〜『日本橋』『辰巳巷談』ほか

→講座概要ページはコチラ

※ 今年は春講座のみの開催です(秋講座はありません)
※ 鏡花作品未読の方やキモノを着たことがない方も勿論OKです


【受講費】
早稲田大学オープンカレッジ会員の方 8,748円
早稲田大学オープンカレッジ会員ではない方(ビジター) 10,060円

【早稲田大学オープンカレッジ会員について】
・会員の有効期限は、入会年度を含めて4年度間(3月末日まで)
・入会金8,000円(税込)
・入会金6,000円の特例あり(ビジターとして過去に受講された方、早稲田大学オープンカレッジ会員の紹介、早稲田大学卒業生、早稲田大学在学生父母、東京都新宿区・中央区・中野区に在住・在勤の方、ほか)
・会員については、コチラコチラを御覧ください
・会員にならずに、ビジターとしての受講も可能です
・ビジターについては、コチラコチラを御覧ください

【申込方法】Web、Tel、Fax、各校事務所窓口にて受付中
・お申込み方法については、コチラコチラを御覧ください



鏡花ワールドに不可欠な、「美女」と「キモノ」


早稲田大学エクステンションセンターでの講座も、今年で5年目になりました! 毎回、切り口を変えながら(文学、歌舞伎、映画などなど)やってきましたが、2016年2017年は、江戸時代をメインにした「人物像で読み解くキモノファッション文化史」を2年連続で開催しました。今年は、明治大正篇ということで、泉鏡花作品を味わいながら、明治大正期のキモノを理解してきたいと思ってます。

そう、泉鏡花ですよ、皆さま。お好きですよね? お好きですよね? あれ? そうでもない?(笑) 私は、大好きです! というか、私にとってもう「」なので、好きとかそういうことは超えて、「常に空気の中に鏡花ワールドが漂っている」感じで…。例えば、散った桜の花びらを行き交うタクシーが巻き上げる夜の渋谷の交差点にいるときとか、古いたとう紙を開けて黴と留木が混じり合ったような香りが立ち上ったときとか、そんなとき、私の脳内には鏡花ワールドが展開しています。

鏡花ワールドの素晴らしさは、一言で言えば、それがなければ何ということもないような、普通で、平凡で、言ってしまえばつまらなくて、下手したら薄汚くて醜いような、そんな世界さえも、美しい幻想世界に変えてくれる、魔法の世界であるということなんですね。

そんな魔力に満ちた鏡花ワールドにおいて絶対に欠かせないのが、「美女」と「キモノ」なのです! 「美女」がいるところ、「キモノ」あり。「キモノ」あるところ、「美女」あり。その美女がすうッと立って、月のような眉毛を開いて此方へ莞爾(にっこり)、「似合いますか」。ですよ!!!!


鏡花作品の「キモノの描写」を読み解きたい!


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そんな華麗な文章で埋め尽くされた鏡花作品ですが、実は、鏡花ファンの方ならご存知のとおり、キモノの描写がとても多いのです。ただでさえ飛躍の多い文章なのに、キモノの知識がなかったり、当時のキモノのルールを知らなかったりすると、何が書いてあるのかサッパリわからない、ということがたまに発生します。でも、それだけで鏡花作品を難解だとしてしまうのは、それは勿体ないことなぁ、と常々思っておりました。

そうそう、2014年にも早稲田で「着物で読み解く名作日本文学」という講座を開催しました(そのときは、泉鏡花『婦系図』、夏目漱石『それから』、永井荷風『つゆのあとさき』、谷崎潤一郎『細雪』、有吉佐和子『香華』、を取り上げました)。
www.nagi-ijima.com そのときに、鏡花とキモノについて90分でお話するのはあまりに時間が足りない…と実感したため、今回、鏡花×キモノにしぼった企画にしてみました。


そもそもですが、なぜキモノと文学なのか? と言いますと、私がキモノに興味をもち始めたきっかけの一つが、近代文学だったからなのです。高校生のときに、鏡花や荷風や紅葉を貪り読んでいたのですが、出てくるわ出てくるわ、キモノの描写がズラズラと、何行も連続して。しかも、それが何なのかサッパリわからない(笑)。このキモノ描写を読み解けるようになりたい! でも、どうしたらいいのだろう? と、焦がれるような思いで古本屋をうろついていたことを思い出します(ネットがなかったので、そう簡単にキモノの歴史や背景を得ることができなかったのです…今は良い時代ですね)。

そんな私の、ティーンズ時代〜アラフォー時代にまで渡る長き試行錯誤をふまえて(笑)、この講座では、鏡花の作品を舌なめずりしながらじっくり楽しむとともに、明治大正期のキモノの流行や背景、その歴史などについて、しっかり解きほぐしていく予定です。

また、鏡花は石川県(金沢)出身だったせいもあるのか、人一倍「江戸文化への憧れ」を持っていた人でした。妻にした女性も、神楽坂の芸者さんです。「江戸っ子でない人の江戸趣味」というのは、とかく理想主義になりがちなもの(笑)。そうした鏡花先生の憎めない「江戸趣味」問題や、また、鏡花先生ごのみの「キモノ」や「美女」についても、適宜ご紹介できたらと思っています。


春の土曜日の昼下がり、みなさんと、鏡花先生の幻想ワールドにしばし浸りつつ、キモノについての知識や歴史をお話できたらいいなと考えております。とにかく、私自身が鏡花先生の大ファンなので、楽しい時間にしたいな、と。ぜひぜひ、お気軽にご参加くださいませ♪




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「着物で読み解く名作日本文学
    〜夏目漱石から、泉鏡花に永井荷風、有吉佐和子まで」


2015年
「歌舞伎で読み解く着物ファッション
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「江戸のラブストーリー『人情本』に見る江戸娘の着物ファッション 〜『春色梅児誉美』を読んでみませんか?」
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   〜歌舞伎、浮世絵から、任俠、花柳界、戦前モダン文化まで」

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サンデー毎日12/17号に、「若尾文子、究極のキモノ美人」を寄稿しております。


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昨日12/5発売の「サンデー毎日」(12/17号)に、拙文「映画で堪能すべき女優たちの「日本の美」 若尾文子、究極のキモノ美人」を寄稿しております。若尾文子さんの「奥さんキャラ」と「キモノ」の関係について、なんと、3ページも書かせていただきました!


しかも、「キモノ美女を観るための 名作映画ベスト5」リスト付き。選択基準は、「キモノ美女を堪能できる」作品で、かつ「映画としても面白い傑作」であることをポイントに、5作品5女優をセレクトしてみました。どんなリストになっているか、ぜひ誌面をご覧いたけたらと思うのですが、、そのなかでもひとつだけご紹介したいと思います!

それは、太地喜和子の、代表作。そう、私がブログで何度も熱く熱く熱く語ってきた、傑作コメディ映画『喜劇 女の泣きどころ』(1975年 瀬川昌治監督)です!

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この映画に登場する太地喜和子は陽気なストリッパーなのですが、彼女のキモノ姿と言ったら、キモノのルールを全く無視したゴテゴテの洋風アレンジの着こなしで、可笑しいやら、可愛いやら。キモノルールそっちのけで、キモノに、巨大イヤリングとか、サングラスとか、ファーストールとか、クラッチバッグとか、個人的に大好物のアイテムが満載。

とにかく太地喜和子が魅力的でオシャレだし、物語も素晴らしいし、笑えて泣けるし。私は「映画はとにかく脚本次第」だと思っていますが、この映画は脚本が、なによりも素晴らしい。脚本を自ら執筆された、瀬川監督ならではの素晴らしい傑作なんですよ。

ところが、この作品、VHS化もDVD化もされていないというヒドい仕打ち…。瀬川昌治監督に、「太地喜和子のストリッパーシリーズ、ぜひDVD化してほしいんです!」と言ったら、「(松竹が)出してくれればいいんだけどねぇ」とニコッとされたのを思い出します(今思えば、失礼な質問だったかもと…)。そんな私に、このシリーズの作品をDVDに焼いて渡してくださった、優しい監督は昨年お亡くなりになりました。こんな傑作を埋もれさせておくのは、もったいなすぎる! 松竹さま、ぜひぜひ、DVD化をお願いします!!! という願いを込めて、今回リストに入れました。

また、この時期のセクシーで明るくて可愛い太地喜和子のキモノ姿を楽しみたい方は、『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1976年 山田洋次監督)もオススメです! リストには入れられなかったのですが、この作品での太地喜和子は片田舎の陽気な芸者役で、これまた魅力たっぷり。しかも、寅さんシリーズ随一の、素晴らしい傑作。私はこの作品を観るといつも泣いてしまいますよ…(笑)。


ちなみにですが、「サンデー毎日」って、最も古い週刊誌なんだそうですね(大正11年創刊)。私にとってサンデー毎日と言えば、中野翠さんですが! 高校時代からずっとファンでしたから! しかも、「サンデー毎日」には泉鏡花も何度も書いているんですよね〜。特に、個人的にフェイバリットな小品『鷭狩』は、「サンデー毎日」(大正12年)に掲載されたものですが、この『鷭狩』とという作品ときたら、なんと、オチが、平成の傑作『アウトレイジ・ビヨンド』だとは、ギャー、まさか、そんなことになるとは思いもよらなかったよーッ! な、トンデモない怪作で…(と、話が尽きないのでここで終わり)。


というわけですが、「サンデー毎日」は週刊なので、お早めに(すぐ無くなってしまうので)。ぜひご覧いただけたら嬉しいです!



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