今年2019年4月28日、「超歌舞伎」を初体験してきました!
「超歌舞伎」、ご存知でしょうか? 「ニコニコ超会議」で開催されるイベントのひとつで、ボーカロイドの超人気キャラクター・初音ミク嬢と、歌舞伎役者・中村獅童丈によって演じられる、最新CGデジタル技術を駆使した新たな歌舞伎作品です!
…と、偉そうに書いている私、「超歌舞伎」をよくわかっておりませんでした(笑)。古典芸能ファンにありがちかもしれませんが、「江戸や明治を体感したいから歌舞伎を見るのであってー、だから歌舞伎作品も古典ものが好きなの」みたいな。まぁ、私もある意味、そういうところがありまして。というか、最近もう、歌舞伎公演が多すぎて、古典の舞台を追うのだけで精一杯で…(泣)。新しい試みにまで手が(というか、おカネが、時間が)まわらない。そんな感じで、「超歌舞伎」が話題であることも知っていたのですが、とくに見に行ってはいませんでした。
ところが。見に行ってみてビックリ。あ、最初に結論を言うと、「素晴らしくパワフルで面白くて、いやー、興奮した! また行きたい!」でした。
それどころか、ある意味、「これぞ、歌舞伎の原点なのではないか?」とまで思わされました。
というわけで、初音ミク嬢のこともニコニコ超会議のこともよく知らなかった、そんな、単なる「いち歌舞伎ファン」の私が、「超歌舞伎」を見てどう思ったか? 超歌舞伎見てきたよー、の巻です。 (添付画像は、会場で撮影したものと、ニコ動生放送でキャプチャーしたものと、両方を使っております)
1.「歌舞伎の原点」を体感できる!
まず、いち歌舞伎ファンが一番興奮したこと。それは、何よりも「掛け声、カケホーダイ」だということです! 生まれて初めて「よろずやー!」と掛け声をかけた楽しさといったら(笑)。歌舞伎ファンの方なら、わかっていただけますよね? 女性が歌舞伎座で掛け声かけるなんて、なかなかできませんし(まぁ、先月の猿之助丈の『黒塚』の時はわりと女性の声が飛んでいましたが)。男性だって同じですよ、うかつにヘンな間で、ヘンな掛け声なんかしようものなら、即効、twitterに「今日の掛け声なにあれ」「今日の掛け声ひでーな」と書き込まれますからね…。
しかし、会場の皆さんのノリノリ具合といったら、「よろずやッ!」なんてそんなシブいものじゃありません、「よろずやぁぁああー! よろずやぁぁぁああああー! うおぉぉおおー!」という感じ。昔、大宮ルミネかなんかで、アイドルの店内イベントかなんかにうっかり遭遇し、地鳴りのような低音が床から響いてきてド肝を抜かれたことがありましたが、まぁ、そういう感じ(違うかも)。
そして、それに応えるかのように、いや、それをさらにさらにエスカレートさせるべく、獅童丈が煽る! 煽る! 煽りまくる!!!(笑) あの煽り方は、まさに、そう、ロックスター! 獅童丈による会場内のボルテージの盛り上げ方がとにかく巧みで、堂に入っていて、さすが「中学時代から40歳半ばに至るまでずっとロックバンドやってきた男」は違うなーと、心底感心してしまいました。あれは、ほかの歌舞伎役者には、ちょっと勤まらないのではないのではないでしょうか? やはり、「中学時代から40歳半ばに至るまでずっとロック魂を燃やし続けるウザいほどアツい男」でなければ!!!
しかも、観客の皆さんが、ペンライトをわーっと揺らして、会場を盛り上げるのですね。暗闇のなかで揺れる無数のライトが、とっても綺麗で、幻想的で…。私もペンライトほしかったんですが売りれてしまったので、iphone を持って揺らしました(笑)。
しかも、最後のほうは、全員総立ちで、ペンライトを両手に1本ずつ(要は合計2本)もった観客たちによる見事に統一された踊り( ヲタ芸?)まで発生。というか、この人たちが1人で2本も買っちゃったから、私のぶんがなかったのだな…。次回「超歌舞伎」に行かれる方、ペンライト購入はお早めに。
そんなわけで、歌舞伎座では絶対にできないことも、「超歌舞伎」では、できちゃう。そして、ある意味、「これこそが、歌舞伎の本来の原点なのではないか?」と思ったわけです。
思うに、江戸時代の歌舞伎もそういうものだったはずですよね。踊りやら芝居やらを見せるスターに、熱狂した観客が「まってましたっ!」「なりたやぁー!」と声をかけずにいられなかったようなもの、だったはずですから。
あ、もちろん、「過去の歌舞伎に戻るべき」と言ってるわけではありませんよ? ただ、そんな「歌舞伎の原点」を体感できるこんな公演も、楽しいなぁ、面白いなぁ、と。歌舞伎ファンとして、素直にそう思いました。
2.CG映像で「見たことのない歌舞伎映像」が見られる!
それともうひとつ大事なこと。それは、CG歌舞伎映像体験が、想像以上に楽しい! ということ。
まずですね、オープニング、超絶カッコイイ! 今回の『今昔饗宴千本桜(はなくらべ せんぼんざくら)』、オープニングはなんと大正時代の街を駆けめぐる列車線路から始まり、見ている者はまるで高速ジェットコースターに乗せられて街を疾走するかのようなヴァーチャル体験を味わいつつ、線路はそのまま空へと、高く高く、駆け上がる! …まるで『銀河鉄道999』のような胸アツ展開の後に、キャメラは大正ロマンなミルクホールへと突入、そこでは、初音ミク嬢が踊りながら皆さんをお出迎え、さあ、始まるよ! …というなんとも興奮なオープニングに、心つかまれまくりでしたね(999世代のため…)。
また、今回のこの「超歌舞伎」では、『義経千本桜』のおなじみの登場人物である佐藤忠信が(中村獅童)が龍と戦うシーンがあるのですが、このシーンはCGで制作されていまして。なんと、忠信と龍の戦いを、ローポジション・ローアングルから、またはハイポジション・ハイアングルから、さらにはキャメラがグルグル回ったアングルで、見ることができるという、まさに「超・歌舞伎」な体験! いやー、面白かった。通常の歌舞伎では、どんなに良い席をゲットできたとしても、歌舞伎を、下から、上から、もしくは回りながら、見ることなんてできませんから(笑)。まさに、CGならでは。
で、その忠信と戦うCG龍が、めちゃくちゃカッコイイ。シルバーに冷たく光るギーガーチックな龍。この龍だけが、機械の体をした龍なんですよ! 銀河鉄道999でいう「機械の体」を手に入れやがった野郎なんですよ! しかも体がやたらと長い!!! 生理的にゾワッとくるカッコよさ…と思ったら、デザインされたのはなんと、『ウルトラマン』等の怪獣デザイナー井口昭彦さんとのこと(本作のディレクターがその娘さんにあたる高橋玲香さん、というつながりにて)。さすが。
そして、忘れてはいけないのが、ミク姫の可憐な踊り!
CGなのに、全然上達しない私より百万倍上手い! …って当然です(笑)、実は、実際に(データ上で)踊っているのは藤間流宗家・藤間勘十郎さんですから! 勘十郎さんの素晴らしい踊りが、何の違和感もなくミク姫の踊りに転換されていて、踊り好きとしてはたまりませんでした。余談ですが、この技術、踊りの稽古ツールなんかに応用できないものかしら…なんて…(お手本の踊りと自分の踊りが、座標でどれくらいズレているのかが分析できると、稽古に役立ちそう)。
また、獅童丈による、古典歌舞伎ではおなじみの梯子を使った立ち回りも。こういうところは、古典芸能○百年の積み重ねのすごさを感じますね…。
澤村國矢さんの、青隈が禍々しい悪役っぷりも、とても素晴らしかった。何と言っても、カーテンコールで披露された國矢さんの毛振り! いいぞいいぞー! やったれやったれー! と応援(笑)。
そしてクライマックスは、ニコ動の象徴ともいえる「コメント」の嵐、そしてそのコメントによって、とある「奇跡」が訪れる。「ニコニコ動画の世界」と「リアルの会場」が、つながる!!! …という感動。
光と、音と、CGと、アクロバティックなアクションと、伝統芸能としての古典歌舞伎と、ニコ動のコメントと、そして観客、すべてが渾然一体となった、「お祭り」としか言いようがないカオスっぷり、歌舞伎ファンもそうじゃない人も、ぜひ体験すべき。ほんと、楽しかったです!
3.私もちょっぴり協力させていただきました!
で、余談ですが、実は私も、ほんのちょっぴりだけですが協力させていただきました。今回のミク嬢は「お姫様」という設定だったので、衣装設定などですこしアドバイスをさせていただきました(こうしたお仕事も承っておりますー!と、ここで宣伝)。
そして、「衣装撮影協力 井嶋ナギ」とクレジットも入れていただき、感激です。やっぱり、撮影するよね…(すみません)。
それから、この画像だとあまりよく見えないのですが、ミク嬢の象徴「ツインテール」と、お姫様の髪型である「吹輪」がしっかり可愛く融合しているんですよ! ここ、個人的にかなり好きです。
これは超会議の、別の会場に出ていた「ミク山車」。ここでのミク嬢は芸者に扮して、みなさんに手を振っています。「どうぞご贔屓に〜」。
で、このミク姐さんの、帯、に注目!!! 芸者の定番である「博多献上帯」の、柄をよーく見てください。
わかりますでしょうか? なんと、博多献上帯の獨鈷柄が「ニコ動」マークになっている! 細かいっ! 実は、「超歌舞伎」のディレクターを毎年つとめていらっしゃる高橋玲香さんが、自由学園明日館で開催した拙講座(コレ)にいらしてくださり、このアイディアを思いついたんだそうです。こういう細部の「分かる人には分かる」こだわりの遊び、最高ですねー。
そんなわけですが。なんと今年の8月、改修が終わったレトロゴージャスな劇場「京都南座」にて、「超歌舞伎」が上演されるそうです! 演目は、今年のこの『今昔饗宴千本桜(はなくらべ せんぼんざくら)』と、新作『お国山三 當世流歌舞伎踊(いまよう かぶきおどり)』。
私のような純粋な歌舞伎ファンも楽しめると思うので、ぜひ思い切ってトライしてみてください! 最先端技術と融合した、真夏らしいお祭りイベントとしても、大変オススメです!
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