先日、今月の歌舞伎座が素晴らしすぎた〜!という記事を書きましたが(→「踊りを「体感する」ということ。 〜『京鹿子娘五人道成寺』『二人椀久』in 歌舞伎座」)、昨日、ふたたび同じ踊りを見てきました! 今回は「一幕見席」で。そう、前回の記事で、最後のほうでチラッと触れた「一幕見席」です。
実は、この「一幕見席」、知っている方が意外と少ない、ということに最近気が付きまして。「それはもったいないことだなぁ」と心底思い、勝手に一幕見席普及委員会発足(会員は私だけ)。そんなわけで、今回は「一幕見席」についてご紹介したいと思います!(もちろん、歌舞伎に詳しい方は「そんなこと知ってるよ」ということばかりですので、どうぞスルーしてくださいませ…)
一幕見席って、なに?
「一幕見席(ひとまくみせき)」とは、文字通り、「(すべての幕ではなく)ひと幕だけ見る、ということができる席」のこと(「幕見席(まくみせき)」「幕見(まくみ)」とも言います)。
たとえば、12月歌舞伎座の第三部では、『二人椀久』と『京鹿子娘五人道成寺』の2演目が上演されていまして、通常のチケットを買った場合、この2演目を鑑賞することになります。一方、「一幕見席」で、となると、『二人椀久』だけ見る、または『京鹿子娘五人道成寺』だけ見る、もしくは両方とも見る、といったことがそれぞれ可能になるんです! これ、すごい親切ですよね? だって、「すべて見るのはおっくうだけど、一つだけなら見てみたいな」という「ワガママなツマミ食い」が許されるんですからー。ありがたや〜。
その代わり、いろいろと制約はあります。
「一幕見席」のルールは、以下。
■ 当日券のみ。予約はできません。
■ 自由席のみ(90席)。指定席はありません。早いもの順です。
■ 自由席が確保できなかったら、立ち見(約60人)になります。→ペタンコ靴必須!
■ 「一幕見席チケット」は、いつでも買えるわけではありません。幕ごとに、「一幕見席チケット」の販売開始時間が設定されています。なので、おめあての幕の「一幕見席チケット」の販売開始時間まで、歌舞伎座の外で並んで待ちます。→冬は防寒具必須!夏は水分必須!
■ 同一「部」内の連続した幕であれば、まとめてすべての幕の「一幕見席チケット」を買うこともできます。(つまり、今月の第三部なら、第三部内のすべての幕のチケットを、最初にまとめて買うことも可能)
■ 「一幕見席チケット」には番号がふってあります。最終的には、番号順に入場します(公平です)。
■ 4階席、いわゆる「天井桟敷」です。→オペラグラス必須!
■ 価格はリーズナブル。一幕につき1000円ほど。長い演目だと一幕2000円も。
■ チケットは本人分のみ。他人のチケットは購入不可です。
というルールになっております! どうでしょう?(結構、慣れるまでフクザツですよね…)
いざ、一幕見席で歌舞伎を見てみよう!
ふーん。でも、イメージが湧かない…という方のために、カンタンに、バーチャル一幕見ツアーを以下に開催!
まずは、おめあての幕の「一幕見席チケットの販売時間」知ることが大事です。歌舞伎座では毎月、上演演目が替わるので、月の初めになると、サイト「歌舞伎美人」にて「幕見席の案内」が発表されます。まずは、チケットが発売される時間をチェックしましょう!
↑ こんな感じで、「一幕見席チケットの発売時間」をサイトで確認。幕ごとに、「一幕見席チケットの販売時間」は異なります!
いざ、歌舞伎座へ!
「一幕見席チケット売り場」は、歌舞伎座の正面左側にあります。
窓口の上に「一幕見席切符売場」とあります。
↑ 係の人が立っているので、わからなかったら聞いてみるとよいです(とても親切です)。
ここが、「一幕見席の入口」です。
↑ 左のほうに、「一幕見席チケット」が発売されるのを待っている人たちが、並んでいます。赤い毛氈を敷いたベンチを出してくれるので、座って待つことができます!(昔は、ベンチは4,5人分しかなくて、あとは全員立ったまま並んでたんですよ…スパルタだった…)
ちなみに、「一幕見席チケット」販売開始時間より、どれくらい前に並んでいればいいのか?問題ですが。平日でしたら、「一幕見席チケット」販売開始時間より、20〜30分前に並べば、席は確保できるかと思います(土日はもう少し早く行ったほうがいいかも)。
ただし、注意すべき点があります。「一幕見席」では、一幕だけでなく、複数の幕を続けて見ることもできます(これを「通しで見る」と言います)。この場合、複数の幕の「一幕見席チケット」を、あらかじめ先にまとめて買うことができちゃうんですね(これを「通しで買う」と言います)。…ということは……、もしアナタが途中からの幕の「一幕見席チケット」を買いたい場合、「それ以前の幕からずっと見続けている人が結構いるかもしれない…」「その場合、既に席が埋まってるかもしれない…」ということを考慮に入れて、並ぶ時間を決めたほうがいいかもしれません。
特に、人気役者や人気演目の場合は、できるだけ早く並ぶに越したことはありません。もしくは、安全策をとって、最初から「通し」で見たほうがいい場合も…。
ちなみに昨日、私は幕見席で『二人椀久』『京鹿子娘五人道成寺』を通しで見ましたが、『二人椀久』だけ見て帰った人は、ほっっとんどいませんでした…(つまり、ほぼ皆さん「通し」で見ていたということ)。『京鹿子娘五人道成寺』から来た方は、立ち見になった確率高いです。でも、まぁ、今月は玉さま舞踊公演なんで(笑)かなり特殊事例かと思いますが…。
で、「一幕見席チケット」販売開始時間になったら、並んでいる順に、切符売場窓口でチケットを購入します。通しで見たい場合は「通しで」と言いましょう。
↑ 私が昨日購入した「一幕見席チケット」。『京鹿子娘五人道成寺』は豪華演目のため、ちょいお高めの2000円。『二人椀久』は30分くらいですので、1000円でした。最終的には、ここに記された番号順に入場することになります。
チケットを無事購入できたら、ひとまず、その幕の上演開始時間の20分前になるまで、時間をつぶしましょう。近場では、歌舞伎座のすぐとなりに、プロントがありますよ(混んでますが)。
上演開始時間の20〜30分前になったら、先ほどの「一幕見席入口」から歌舞伎座に入ります。
↑ 赤いエレベーターで「4階」へ!(昔は、ひたすら急勾配の階段をのぼらされたんですよ…スパルタだった…)。
4階に到着すると、係の方が「チケットに記されている番号順に並んでください」と指示してくれます。しばし、ロビーで番号順に並んで待ちます。ちなみに、ロビーはふっかふかのカーペット敷きなので、立っていてもそれほど疲れません。
さて。いよいよ、入場です!
番号順に劇場内に入ります! 椅子取り合戦です!!!
…というのは大げさです(笑)。番号順に入場するので、心配ご無用です。
↑ 一幕見席のようす。あまり良い写真でなくてすみません。天井に限りなく近いですね。
一幕見席の椅子は、通常の席と同じ、ふかふかの上質の椅子です(昔は、硬いベンチしかなかったんですよ…スパルタだった…)。椅子席は2列です(90席)。
立ち見の場合は、(左写真のように)椅子席の後ろに立って観劇します。実は、立って見るとよく見えるので、疲れないスニーカーとかでしたら、意外とオススメです!
そのほかの注意事項としては、以下。
■ 「通し」でチケットを買った場合
「通し」で続けて見る場合、そのまま同じ席にいてOK。ひとつの幕が終わると、係の人が「次の演目もご覧になる方は、次の幕見席チケットをお見せください〜」と言って、チケットをチェックしに来てくれます。
■ オペラグラス絶対必須!
歌舞伎座内ではオペラグラス貸出しはありますが、一幕見席でのオペラグラスの貸出はありません(昨日知りました)。ただし、限りなくオモチャに近いオペラグラス(3倍)は売っています。が、昨日購入されたお友だち曰く、「ほとんどピントが合わない」とのことでした…(泣)。
■ 筋書きは売っています
筋書き(プログラム)は売っています。舞台写真(ブロマイド)やグッズは売っていません。
■ イヤホンガイド・字幕ガイドあります
難しそうな演目のときには、イヤホンガイドや字幕ガイドも借りられます(有料)。英語版もあるので、海外の方でも安心。
■ ドリンク自販機はあります
ドリンクは買えますが、食べ物は売っていません。昼や夜のごはんタイムに重なる場合は、コンビニでおにぎりやパンを買って、幕間(休憩時間)に食べるとよいです。歌舞伎座は、国立劇場などと違って、座席で飲み食いしてもOKなんですよ。ステキ!
■ 幕見席は4階のみです
ほかの階(1階〜3階)には入れません。幕見席チケットで入れるのは、4階のみ。
■ そのほか詳細は、松竹株式会社「一幕見席について」へ。
昔は、「一幕見席」って、「通」の人たちが多い席だったんですよね(もちろん、今もそうですが)。20年ほどの前の大学生時代、お金がなかったので、幕見席でよく見ていましたが、幕見席の端っこに、激シブな声で掛け声をかけている方がいたものです〜。絶妙なタイミングで発せられる、ノドの奥から絞り出したみたいな、カスレて、シナびた、カッサカサの(笑)、シブ〜〜い声の掛け声、あまり聞かなくなったなぁ…。
最近の「一幕見席」は、外国人観光客の方々がとても多くなっているようす。でも、海外の方だけでなく、旅行で東京を訪れる日本の方々にも、ものすごーくオススメ!(意外と知られていないみたいなので、声を大にして言いたい)
もちろん、あらかじめチケットを買っておくほうが、ゆっくり見られるので、可能ならそのほうがいいとは思います。が、そういつも前もって予定が立つわけでもないですよね…。そんな予定がたたない忙しい方や、ちょっとだけ歌舞伎を見てみたいという方にもピッタリかと。「一幕見席」で歌舞伎を見られるのは、東京の歌舞伎座だけ。ぜひチャレンジしてみてください♪
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■ 2016年 玉三郎×勘九郎『二人椀久』 玉三郎×他『京鹿子娘五人道成寺』を見た記事
「踊りを「体感する」ということ。 〜『京鹿子娘五人道成寺』『二人椀久』in 歌舞伎座」
■ 2006年 玉三郎×菊之助『二人椀久』を見たときの記事
「【歌舞伎・日舞】 『二人椀久』@歌舞伎座」
■ 2014年 玉三郎×七之助『村松風二人汐汲』『二人藤娘』を見たときの記事
「玉様&七之助の『二人汐汲』 〜もしくは、あまちゃんと汐汲み女の謎について。」