すっかり夏になってしまいましたが、今春に早稲田大学オープンカレッジで行った講座について、すこしレポートをしたいと思います!
講座タイトルは、「人物像で読みとく着物ファッション 〜花魁、芸者から町娘、モダンガールまで」。毎回、「人物像・キャラクター」(花魁、芸者、町娘、女給など…)を設定して、それぞれのキモノファッションを、さまざまな資料を使って見ていく、という内容です。
私がキモノ文化を知る際にずっとこだわってきたのは、「特定の職業や身分という枠を設定して、キモノ文化を見ていく」、ということです(前回の記事にも書きましたが)。ただ単に、通時的に、「江戸初期のキモノはこうで後期にはこうなって、明治にはこうなりました」というだけだと、いまひとつ掴めないんですよ、キモノって。なぜなら、「着るもの(=キモノ)」というのは、身分や職業などの社会的な「記号」を表すものでもあったから。つまり、身分や職業によって明確な「差異」があってこその「記号」ですから、それぞれがハッキリと違っていることにこそ、意味があったわけです。
それなのに、今では、「着物」という名の元にひとつにまとめられてしまっているがために、意味がわからなくなっていることが多いように思うのです。でもまぁ、今は、身分制度もないし、職業で着るものを規定されることもないし、ましてや既婚未婚や年齢で着るものを決められるなんてことになったら大問題ですから(笑)、しょうがないんですけどね。でも、そうした「身分」「職業」「年齢」「未婚既婚」によってどのように装い方に違いがあったのか? を知るだけでも、キモノってかなりわかるようになってくる。と、私は思っています。
つまり、要は「まずはキャラ設定してから、そのファッションを見ていけば、わかりやすいし楽しいんじゃない♪」という趣旨です(笑)。
そんなわけで、吉原の花魁、島原の太夫、芸者、御殿女中、娘、妻、カフェーの女給、キネマの女優…といった、江戸時代〜昭和初期の代表的な「人物像」を設定して、そのキモノファッションだけでなく、その背景にある歴史や文化も含めて、見ていきました。
キモノファッションだけでなく、その職業や身分の社会的背景や歴史を、かなーーり細かく説明しましたが、私はそういった細部こそが大事だと思っています。というのも、そうした「人物像」に自分自身が「なりきる感覚」をできるだけ持てるようになることこそが、キモノ文化を理解するのにとても大切だと思うので。結局、「着るもの」って、もう一枚の皮膚のようなものなので、それを着て、どう行動し、どう振る舞い、何を感じ、何を思うか、っていうところまで何となく想像できないと、現実感が沸かないんですよね。で、そうした感覚が沸かないと、単に「100年前にはこういうカタチの衣服がありました」という過去の事実としてしか、捉えることができなくなってしまう。それはもう、キモノファッションからは遠い、単なる「歴史の教科書」内のデータでしかないと思うのです(もちろん、それはそれで意味があることですけど)。
上記の写真は、早稲田大学オープンカレッジのFacebookで紹介していただいたものです(ありがとうございます!)。毎回、キモノを着て来てくださる方々が多くて、感激でした! 私はキモノを着て講義する余裕がなく、いつも洋服でしたが。。
ちなみに、これは「芸者」の回。スクリーンに写っているのは、『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年 山下耕作/監督)で、民謡「田原坂」にあわせて踊る芸者を演じた、藤純子さんです(このシーンについて「黒田節」で踊る〜という記述をよく見かけますが、「黒田節」は「♪酒は飲め飲め〜飲むならば〜」なので違いますー。「田原坂」は「♪雨は降る降る〜人馬は濡れる〜」です)。
今回の講座は、当初40人定員のところ、41人もの方々にお申込みいただき、本当にありがとうございました! お忙しいなか、美しくキモノを着ていらしてくださったり、関東以外の遠方からもいらしてくださった方もいらっしゃって、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。いろいろ盛り込みすぎて駆け足になってしまったり、至らないところも多くあったかと思いますが、、反省点をふまえて今後さらに改善していきたいと思っています。
秋にもまた講座を開催しますので、ご興味ある方はぜひお気軽にご参加くださいませ。皆様のお越しをお待ちしております…!
—— お知らせ ——
■ 秋(9〜11月)も講座を開催いたします!
(詳細については、後ほど当ブログでご案内いたします)
早稲田大学オープンカレッジ 講座「着物で読み解く名作日本文学 〜夏目漱石から、泉鏡花に永井荷風、有吉佐和子まで」
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■ 春の講座を受講してくださった方々がブログでレポートしてくださいました。ありがとうございます!
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