井嶋ナギの日本文化ノート

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9/2 三溪園でのチャリティイベント「伝統文化の持つ力」のお知らせ。もしくは、近代の「数寄者」について。


初秋イベントのお知らせです!



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9/2(日)、横浜の三溪園にて、「東日本大震災 復興支援ワークショプ 『伝統文化の持つ力』」が開催されます。

このイベントは、国指定名勝「三溪園」の一角にある、横浜市指定有形文化財建築「鶴翔閣」にて、さまざまな伝統文化(能、日本舞踊、茶道、台湾茶道、華道、書道、聞香、和菓子、紋切り)を好きなだけ体験できる、滅多にないとても貴重なイベントです。

その日本舞踊のワークショップを、私の師匠花柳美嘉千代先生が担当することになりました! 私もアシスタントとしてお手伝い&皆さまの前で踊る予定です。ぜひいらしてくださいね!


【日時】
9/2(日) 
9:30 open 〜 16:30 close

【プログラム】
日本舞踊ワークショップ
 第1回目 11:30〜12:50
 第2回目 14:30〜15:50
※日本舞踊ワークショップ詳細については⇒コチラ
※その他のワークショップについては⇒コチラ


【場所】
三溪園
※交通アクセスについては⇒コチラ


【参加費用】
前売チケットのみ 5,000円(税込)
家族でお越しの18歳以下のお子様は無料です。
チケット販売は8/31 18:00までですのでお早めに!
※チケットについては⇒コチラ


■公式サイト「東日本大震災 復興支援ワークショプ 『伝統文化の持つ力』
■チラシ ⇒コチラコチラ
■ヨコハマ経済新聞記事「三溪園で日本伝統文化の体験ワークショップ-被災地支援オークションも



そんなわけで、もう日程が近づいていますが(連日バタバタでブログ更新がギリギリになってしまい…すみません。。)、こんなにたくさんの伝統文化ワークショップを体験できるなんて、かなーり貴重なイベントだと思います…! ワークショップだけでなく、茶道具のオークションも行われ、売上金は瓦礫処理や花畑作りなどの復興支援活動にあてられる予定。昨年も大盛況だったそうで(昨年のようすはコチラ)、約124万円も集まったそうです。ちなみに、去年の日本舞踊ワークショップは、市川ぼたんさん(もちろん海老蔵のお姉様です)が担当されたのだとか…!


このチャリティイベントを主宰されているのは、茶道サロン「SHUHALLY(守破離)・文彩庵」(横浜市中区)の庵主・松村亮太郎さん。英国帰りの茶人でいらっしゃる松村さんが手がけた「文彩庵」は、2010年度グッドデザイン賞を受賞したのだとか(素晴らしく美しく、そして斬新な茶室だそう!)。そんな素敵な茶室で、裏千家茶道教室も開催されていらっしゃるそうなので、私も習いに行きたいです~。


そして、さらに個人的に楽しみなのは、会場である「三溪園」(さんけいえん)! ここ、行ってみたかったのです~。なぜか?というと、この「三溪園」をつくった戦前の実業家である原三溪(はらさんけい)に、以前から興味があったからです。

というのも、私は明治以降~昭和初期の上流階級に非常に興味があり(笑)、いろいろ読み漁っているのですが、そうした本によく登場してくるのが、日本の資本主義を率いた「三井財閥」のトップ、益田鈍翁(本名:益田孝) 。この益田鈍翁こそが、近代茶道界の中心人物と言いますか、茶道具や美術品コレクターの星と言いますか、ものの本には必ず登場してくる近代の「数寄者(すきもの)」の代表で。

ちなみに「数寄者」についてですが、「数寄者」とは、あくまで趣味として茶道を嗜む人たちのこと。ある流派に属して茶道教授を職業とする「茶人」とは、区別して語られているそうです。近代(明治~昭和初期にかけて)の「数寄者」は、たいていが実業家や政治家で、莫大な富を背景に美術品を収集しているうち茶道具などに魅せられ、茶の湯にハマっていった…という経緯。それゆえ、近代数寄者たちの茶道はそれほどお点前や作法にはこだわりを持たず(笑)、美術鑑賞・美術保護の方向性が強かったのだそう。もちろんそこには、広い意味での社交としての要素も強く、益田鈍翁の茶会には誰もが招かれたがり、中には招待されなかった人が垣根を破って入ってきたとか(笑)、普段なかなか会えない鈍翁にも「珍しい茶器さえあれば会って貰える」と聞いて、茶道具集めに奔走したりとか。そういう意味でも、茶道が非常に流行したのでした。

というわけで、「三溪園」をつくった原三溪(はらさんけい)ですが。彼もそうした近代の「数寄者」の代表として必ず登場する有名な人物で、益田鈍翁とも大変親しく、彼の影響で茶の湯に魅了されていったのだそう。生糸輸出業で大成功した原三溪は、富岡製糸場を三井から購入した時期もあったほどの莫大な財力を背景に、美術品(特に仏教美術品)を収集し、日本画家たちを保護し、横浜の広大な土地に「三溪園」を造園し、そこに古建築物を数多く移築し(重要文化財10棟・横浜市指定有形文化財3棟)、さらに1906年(明治39年)という早い時期に「三溪園」を一般に無料公開(奇しくもこの年に、岡倉天心がN.Yで『The Book of Tea(茶の本)』を出版)。ここまでくると、単なるお金持ちの美術コレクターではない、社会貢献としての意味合いが強いですよね。しかも明治の半ばに、古い建築物を移築して今の「明治村」のようなものを作った等、かなり驚かされます。

さらには、1923年の関東大震災で壊滅的な被害を受けた横浜市、生糸業者、一般の人々のために、私財をなげうって復興事業・慈善事業に身を投じて亡くなったのだそうです(→詳しくはコチラ)。

そんな原三溪が愛した「三溪園」で開催される、「東日本大震災 復興支援ワークショプ 『伝統文化の持つ力』」。

皆さま、ぜひお気軽にいらっしゃってくださいね。





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