井嶋ナギの日本文化ノート

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飛田新地「鯛よし百番」にて、大正期の遊廓建築を見る。その2


前記事に引き続き、飛田新地の「鯛よし百番」について。

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2階、各部屋のようす


この日は、私たちのほかにも、予約がたくさん入っていたようで、あちこちの部屋で宴会が行われていました。私が入った部屋の隣では、息子の結婚を祝う親戚たちの宴会をしていたようで、子どもも何人か来ていて、廊下に出てはしゃいだり、私たちの部屋をこっそり覗いたりしてましたね(笑)。すべて個室だし、何人で来ても大丈夫だし、どこでも撮影OKで楽しいし、多くの人に愛用されてるんだな〜と思った次第です。


2階にある部屋もすべて個室。それぞれの部屋に「テーマ」があり、それに合ったモチーフの欄間や細工が施されていました。同じ装飾の部屋は、ひとつとして無い、そうです。


「由良の間」の廊下に面した壁。「由良の間」は『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助がテーマで、2階で最も豪華な部屋。組子格子がカッコイイ。

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「オランダの間」の欄間。

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「千代の間」の格子窓。よく見ると、左から、糸、駒、バチ…と、「三味線」のモチーフが彫られています。

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「お染の間」。お染久松のお話をテーマに、土蔵造りを模した壁。

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「紫式部の間」の入口。

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そのほか、さまざまな意匠を凝らした欄間。「潮来の間」や「宮島の間」など、名所をテーマにした部屋が並ぶ。

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2階の廊下。左側は、中庭。

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2階の窓から、中庭をのぞむ。それぞれの部屋の組子が、シルエットになっていて美しい。

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妓楼は、中庭を四角く囲むように建てることが多いようです。石川県金沢の「ひがしの廓」のお茶屋さんも、同じように中庭を囲むようにして建てられていましたね〜。




階段のある空間に、半分だけの鳥居!

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これは、大坂・天満宮の「天神祭」における「船渡御(ふなとぎょ)」を描いた絵だそう。

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1階、各部屋のようす


再び、1階のロビーへ。この奥に、反り橋がかかっているのが見えるでしょうか?

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はい、大坂・住吉大社の反り橋を模した橋、です!

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反り橋の上で、中庭を眺める。

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中庭には、巨大な陽石と陰石がドドンと置かれています。妓楼に陽物の置き物があるのは、昔からの伝統です。

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反り橋を渡ると、ここから先は「桃山殿」。店内で最も豪華な「牡丹」「鳳凰」「紫苑殿」の3部屋の総称。

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宴会が行われていたので、中は拝見できませんでしたが、廊下だけでも見どころ満載。

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壁には、南蛮貿易の図。

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これは、秀吉と北政所の花見の図だそう。

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さらに、玄関入ってすぐ左にある「顔見せの間」。小さな舞台のような造りの、異空間。

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遊廓時代は、ここで女の子たちが「顔見せ」をしたりして、江戸時代のお大尽遊びのマネごとなども行われたのかもしれません。屋根や欄干など、ものすごく凝った造りの小舞台。襖は破けてしまったまま。





こんな写真が飾られていました。木曜ゴールデンドラマ『ああ、愛しき夫婦』。藤純子さん主演で、ここでロケされたようですね。「ぼやき漫才で一世を風靡した人生幸朗と生恵幸子夫婦の泣き笑いを、桂三枝の脚本で綴る」とのこと。

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というわけで、遊廓建築をじっくり堪能。楽しかった! もう一度、外観を拝む。

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提灯の赤い灯、欄間の透かし彫りが、幻想的。

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「鯛よし百番 アルバイト募集」の張り紙が。接客・洗場 900円より、とのこと。

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なんと、イキナリ、豊臣家の「五七の桐」の家紋!

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この一角だけ、石造りの洋館風。

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というわけで、「鯛よし百番」のあちこちを、それこそ舐めるように堪能しました!

そう言えば、ちょうど私たちと同時に、お店を出た団体客(お年を召した男性と女性の集まり)がいたのですが、そのかなかのひとりの女性が「じゃあ、社会見学しながら帰りましょうか〜」「そうしましょ、そうしましょ〜」なんて言いながら、わざわざ女の子たちが並ぶお店のある方向に、ぞろぞろと団体で歩いて行かれました…。お年を召した方々はさすが割りきってるなーと感じた次第です。






ちなみに。『飛田百番 遊廓の残照』(監修:橋爪紳也 写真:上諸尚美 創元社 2004年)という「鯛よし百番」の建築写真集があるのですが、これが非常に素晴らしい! なぜか絶版になってしまっているので、古本屋で見つけたら即買いをオススメします。

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もう少し書きたいことがあるので、その3に続きます〜。




—— 関連記事 ——


■ 飛田新地「鯛よし百番」にて、大正期の遊廓建築を見る。その1
■ 飛田新地「鯛よし百番」にて、大正期の遊廓建築を見る。その2
■ 飛田新地「鯛よし百番」にて、大正期の遊廓建築を見る。その3
  もしくは、江戸〜戦後にかけての大坂の遊郭の歴史。


■ 「大阪松竹座」「新歌舞伎座」の建築様式と、関西歌舞伎の栄枯盛衰について。




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