井嶋ナギの日本文化ノート

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幽霊と、月影屋の浴衣と、粋について。


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梅雨で涼しい日が続きますが、夏目前。夏と言えば? そう、幽霊ですよね!

(上画像は、「月影屋」による2009年発表「幽霊の浴衣」の柄一部です)

子ども時代、夏に幽霊さんは憑きもの…じゃなかった、付きものでした。というのも、夏は必ず、石川県の祖父母の家に行っていたからです。

そこは、まさに「日本昔ばなし」に出てくるような田舎&家でした。田園風景のなかの陸の孤島のような集落、その集落のなかの竹やぶに面した、築百年以上の古くてだだっ広い日本家屋。そんな家に、幽霊さんがいないわけがありませんよね? 離れにあったトイレに行くのなんか、命がけ。トイレに行くまでに、ご先祖の遺影のかかった巨大な仏壇のある部屋だとか、獅子頭の歌舞伎人形のいる部屋だとか、般若の能面が見下ろす部屋だとか通過しつつ、その間にも、畳はミシミシ鳴るわ、ガラス窓はガタガタ言うわ、電球のまわりで蛾がバタバタ羽ばたくわ、突如、古い掛け時計が、ボーンボーンと鳴るわ、恐怖音満載。

で、また、祖母(母方)が怪談話の名手でして、『番町皿屋敷』や、地獄に落ちた人間どもの阿鼻叫喚のようすなど、孫たちを集めてかなり詳細に語ってくれたものです。ある時、私が布団の上の枕を踏んづけたのを見とがめた祖母が、「枕を踏むと、足が腐って、歩けなくなるぞいね…」(←あやふやな能登弁)と話し出した時は、いつ自分の足が腐り始めるのか、その後一週間くらい恐怖におののいてました(涙)。

そんな原体験があったゆえか、小学生のときに父に与えられた『春雨物語・雨月物語』をこわごわ読み、さらに長じては泉鏡花の『眉かくしの霊』『雪柳』などの恐怖譚を愛読、大学の卒論では鶴屋南北の『東海道四谷怪談』を選ぶに至り、幽霊さんとはすっかり仲良く(?)なりました。特別ホラーが好きってわけではないですが(楳図は好き)、日本の幽霊さんは、なんだか哀愁滑稽味がうっすら漂っているところが、好きです。





そんな前置きをしておいて、「浴衣」の話です。


皆さま、「月影屋」の2015年新作浴衣を、ご覧になりましたか? 


なんと、テーマが、「う〜ら〜め〜し〜や〜〜!」です!!!(笑)
 



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ぎゃーーーッ! 出たーーーー!!!!!!!


……っていうか、この幽霊さん、「月影屋」の店主&デザイナー・重田なつきさんですが(笑)。いや、ほんと、スゴイ浴衣ブランドだなー、「月影屋」。


今年の「月影屋」には、素敵な幽霊さんがたくさん現れているようですよ〜! 何はともあれ、毎年楽しみにしている、素晴らしくユニークかつアーティスティックな「月影屋」新作浴衣イメージフォトをどうぞ!(撮影:和多田アヤさん)



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以上、もっとゆっくり大きな画面で見たい方は、コチラへどうぞ! また、以上の商品を通販で買いたい方は、コチラへどうぞ!! はたまた、単純に「月影屋、スゲーな(笑)!!!」と思った方も、コチラへどうぞ!!!



ホント、こんな浴衣ブランド、なかなかないですよねー! もう以前から拙ブログで「唯一無二の浴衣ブランド」と書いてきましたが。何しろ、「カッコイイ」と「セクシー」と「ハイセンス」と三拍子揃ってる上に、「ユーモアセンス」や「KY的豪胆さ」まで兼ね備えているという、まるで「理想の男」みたいな感じです(笑)。

私が初めて「月影屋」の浴衣に出会ったのは、10年ほど前、まだなつきさんが「ヨコシマの浴衣」を作られたばかりの頃だったのですが、「きゃー、なんて粋な浴衣だ!」と、その場で即買い(私にしては非常に珍しい)。それから、年々、年々、パワーアップされていて、今年の「う〜ら〜め〜し〜や〜〜!!」に至っては、予想だにしなかった展開…。今じゃ、「粋(いき)」とかいう域なんか、かる〜〜く超えています(笑)。



あ、ちょっと話は脱線しますが。「粋(いき)」っていうのは、ものすっごく微妙な領域だと思うのですよ。「粋(いき)」という概念を、水戸黄門の印籠よろしくふりかざす人は、わりと、要注意かと私は思ってます(笑)。というのも、「粋」って、自分で主張しちゃうと、もう「粋」じゃなくなるんですよー。権威としての「粋」をふりかざした時点で、それは全く「粋」ではない。そのくらい、「粋」っていうのは、微妙な、狭い領域の、語弊を恐れずに言えば、ある意味で、ケチな、負け犬の遠吠え的なものと紙一重の、概念だと思います。言うなれば、一昔前の「サブカル」みたいな感じというか、サブカルが権威になっちゃったら、それはサブカルではない、っていうのと同じで。えーと、詳しくは九鬼周造『「いき」の構造』をお読みください(「粋とは、負け犬的な、サブカル的な、概念である」とは書いていませんが笑)。

そういう「粋(いき)」っていうのは、江戸文化とかキモノなんかを好きになると、一度は憧れるのですが、「粋」というのは、もしかして徐々に乗り越えていくべき領域なのかもしれない、と最近思ってます。いつまでも「粋」にとどまっていると、 実は発展がないかも。とも、思うんです。逆に言えば、発展することを押さえつけられていた人たちの、最後のギリギリの反骨精神の現われ、負けるが勝ち的な「価値基準の転倒」が、「粋」という美意識でもあると思うのですね。そういう意味では、どうしてもいつもマイノリティになってしまう自分としては(笑)、やはり本心では、「粋」って、哀しくも愛おしい美意識だなぁ、とも思ってしまうのですが。



なんて、ちょっと脱線しましたが。

そんなわけで、今年の「月影屋」は、スゴイな、と。しみじみ思いました。ここまで来ると、粋かどうかなんて問答を持ちかけようものなら、

「エッ? わっちが粋かどうかッて? 
おきゃあがれ! 粋が怖くて、息が吸えるかいッ!

てな返答をされてしまいそうです(笑)。






で、さらにさらに。この「月影屋」の「う〜ら〜め〜し〜や〜〜!!」と、なにかどこでどうビビッと繋がったのか、東京芸術大学美術館で、なんと「うらめしや〜、冥土のみやげ」展が開催されるとのこと! なんというシンクロニシティ…。

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この展示会で公開されるのは、『牡丹灯籠』『真景累ヶ淵』などの怪談噺で有名な円朝先生による、幽霊画コレクション。このコレクションは、普段は谷中の「全生庵」にて所蔵されていて、毎夏「全生庵」で公開されていたのですが、今年は東京芸術大学美術館で公開! 円山応挙、河鍋暁斎、月岡芳年、伊藤晴雨、柴田是真、鰭崎英朋……と、浮世絵・美人画ファンにはたまらないラインナップ。

遠方で行けない方は、↓この『幽霊名画集 全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション』(辻惟雄監修 ちくま学芸文庫)がオススメ! 私も愛蔵してます。

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この「全生庵」の円朝コレクションにプラスして、東京国立博物館の上村松園「焔」や、福岡市美術館の円山応挙「幽霊図」なども展示されるもよう。7/22〜9/13まで。これは楽しみ!


ぜひ今年は、「月影屋」の「うらめしや〜」な浴衣を着て、「うらめしや〜展」に行って、幽霊さんと交流を深めたいと思っております♪ みなさんも、ぜひ!




—— 関連記事 ——


■「月影屋」2015年の浴衣ショップ情報(原宿ラフォーレ、新宿destination、福岡H.P.DECO、松本セルティなど)→コチラ


結構、歴史を感じる、これまでの月影屋&浴衣関連記事。

■2014年:「「月影屋」浴衣で夏祭りへGOの巻★ もしくは、浴衣の形式昇格について。
■2013年:「youtube動画『井嶋ナギの浴衣講座』 〜「浴衣って何?」の巻、「月影屋にGO!」の巻
■2012年:「2012年「月影屋」新作浴衣&ラフォーレ原宿SHOPレポート!
■2011年:「緊急レポート☆2011年「月影屋」新作浴衣!!!
■2010年:「着付け講座in月影屋のレポートと8月開催のお知らせ
■2009年:「早くも浴衣計画始動! ~月影屋の新作浴衣とお金問題」「速報! 月影屋新作浴衣グラビア発表!!! 題して、「火傷すんなよ、ヨロシク。
■2008年:「2008年夏、浴衣決算報告!
■2007年:「お祭りと現代浴衣考




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