井嶋ナギの日本文化ノート

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山形でトークイベントを行いました。その2 ~「ファッションとしてのモダンキモノ史」についてなど。


バタバタ続きで更新が大幅に遅れてしまいましたが、前回(コチラ)に引き続き、「山形でトークイベントを行いました。その2」です!(画像は、3日目に髪をセットしてくださった「hair with water」さんがくださった百合の花です)

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実は私、山形を訪れたのは初めてでした。が、初めて訪れた印象は…「キモノの似合う街」! というのも、もと城下町だけあって、至るところに古い建物や洋館があって、古い建物好きの私にはたまらない風情。特に古い「蔵(くら)」がたくさん残っていて、それらが改装されてカフェやギャラリーになっているんですよ!! たまらん。。だけどそれらが決して「これ見よがし」ではなく、自然なかんじで街に溶け込んでいて、「ゆったりとした気持ちでキモノを着て歩ける街だなぁ」と思いました。

そんな古い建物好きの私、案内していただいた「」ショップは以下のとおりです。
■蔵カフェ「オビハチ
■蔵ギャラリー「だいます
■蔵そば処「紅山水」(「紅の蔵」内)
■蔵レストラン「classic caffe」(「水の町屋 七日町御殿堰」内)
■蔵キモノアンティークショップ「円阿弥2

って、しょっぱなから「蔵(くら)」の話をするヤツ(笑)。私、蔵が好きなんですよね~。石川県の祖父母の家にも蔵があるんですが、子どもの頃から、親戚みんなが「あんなホコリっぽくて暗いところ・・」と入りたがらないなか、私だけが何かと蔵に入りたがり「変わった子」扱いされてました。なんていうんでしょう、蔵って「非日常」じゃないですか(笑)? 何かが隠されている気配…、どこか異世界につながる気配…。そうそう、蔵といえばやっぱり乱歩の『陰獣』ですよねぇ~、美しい人妻と探偵作家が「土蔵」の2階(赤い絨毯をひいて豪華なベッドを入れたりしてる!)で逢引きを繰り返すんですよね~。そのときの人妻のキモノ姿は、「派手な結城紬の一重物に、桐の落葉の刺繍を置いた黒繻子の帯をしめて、例によって艶々とした丸髷のつむりをふせ」といったなまめかしい風情ですよ!!!!(なぜか興奮) 



えーと、話が脱線しました。今回の山形での着物イベントは、もともと4月に行われる予定でした。山形市開催の「きものDEやまがた」でトークショウを行わせていただく予定だったのですが(詳細はコチラ)、3/11の大震災のため中止に…。ところが、お声をかけてくださった「あとりえのあ」主催の鈴木ゆかりさんが、「井嶋ナギきものイベント実行委員会」を立ち上げてご奔走くださったことにより、今回のイベント開催となりました。ゆかりさんを始め、お力を貸してくださった皆さま、本当にありがとうございました!!! ここで改めてお礼を申し上げます。


さて、山形第一日目は、「FM76.2MHz ラジオ・モンスター」に出演させていただき、イベントやキモノについてなどお話しました。
 

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DJの玉井さんがすご~く盛り上げてくださって、楽しかったです!

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鈴木ゆかりさん(右)と。あ、手前に『色っぽいキモノ』が!


それから、山形市の大型書店さんでも、『色っぽいキモノ』コーナーを作ってくださっていました。ありがとうございます。

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山形市内の老舗大型書店「八文字屋」さんにて。


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山形市内の大型書店「宮脇書店」さんにて。



続く、二日目は、国の登録有形文化財である「清風荘」という素晴らしい日本建築のなかで、トークイベントを開催しました。

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こんなスゴイ大広間~~!!!!! 掛軸~! 壷~! 欄間額~! 衝立~! な、なんか、荻生徂徠とか平田篤胤とかが講義してそうです・・・(←ざっくり過ぎるイメージ)。私がここに座っていいんでしょうか?!

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庭もまた格別にスバラシかったです…!!! 

実は、この「清風荘」、山形城主・最上義光に庇護された大寺院「宝幢寺」の大書院だったそうで。火事で一度消失し、万延元年(1860年)に再建したものが現在の建物なんだとか。

で、こんなステキな場所で開催したトークショウ、テーマは「ファッションとしてのモダンキモノ史」です! 明治以降、欧米文化が入ってきたことによりキモノは変化を余儀なくされました。でも急にガラッと変わったわけじゃないんですねぇ。徐々に、徐々に、ちょっとずつ、ちょっとずつ、洋服に限りなく近づきながらも、それでもギリギリまでキモノとしてのフォーマットを守りつつ、そのなかで差異や変化を楽しんでいた。そんな明治・大正・昭和(戦前)=近代(modern)のキモノの変遷について、資料をPCとiPadでお見せしつつお話いたしました。

明治・大正・昭和初期のキモノについてイベントでお話するのは初めてだったのですが、そもそも私がキモノに興味をもったのは、近代を舞台にした映画や小説がきっかけでした。映画『鬼龍院花子の生涯』とか『それから』とか『緋牡丹博徒』とか、泉鏡花や永井荷風や夏目漱石などの小説、これらは全て江戸時代ではなく「近代」が舞台です。学生の頃の私は、この近代に根強く残っている「前近代」=「江戸」が気になってしょうがなかったんですよね。なぜここまで根強く江戸文化が残っていたんだろう? 江戸文化ってどんなものだったんだろう?? 近代のルーツである江戸を知らなければ近代も理解できないじゃないのーっ! と。それで、大学の途中から江戸文学に専攻を変えちゃったんですけども…。

実は、昭和戦後のキモノも含めてお話したんですが、太平洋戦争中はみんな国民服・モンペ姿になっちゃうので、戦中にいったん日常着としてのキモノが終わるんですね。でも、戦後になると、もう一度ファッションとしてのキモノがなんとか息を吹き返すのですが、しかしそれは結局、高度経済成長期(1960年~1970年代)には完全に終了してしまうのです(そして現代に至る)。

今回のトークイベントのために調べものをしていてフッと気づいたんですが、明治がはじまった1868年から、高度経済成長期の1960年~1970年までで、実はちょうど100年なんです。つまり、明治・大正・昭和初期のキモノは、江戸時代までずっと続いてきた「キモノ文化」から、欧米化としての「洋服文化」に移行するまでの、「100年の模索期」と言えるのではないか、と。そういう大きな流れの枠を設定しながら見ると、近代のキモノの変遷ってとても面白いです。またどこかで機会があったら、この時代のキモノについてお話できたらと思ってます~。

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「山形放送」の方(左)が取材に来てくださり、翌日TVでレポートされました!

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「山形新聞」の方も取材にいらしてくださり、記事にしてくださいました!


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それから、全国でも有名な老舗「古内和傘店」の3代目古内さんが、実演にいらしてくださったんですが、本当に、和傘って美しいですよねぇ…。うっとり。だけど今では、和傘の専門店は日本全国でも10軒しかないんだそうです。とても貴重な技術です。

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これはお祝い事などに使われたりする「寄せ書き用の和傘」なんだとか。古内さんはいろいろな方からの寄せ書きを集めているとのことで、私も書かせていただきました。

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たくさんの方が集ってくださって、本当に嬉しかったです。ありがとうございました!! しかも皆さんステキな着物姿でいらしてくださって、キモノや帯の組み合わせなどを拝見したりしてとても勉強になりました!


トーク後は清風荘の茶室でお抹茶をいただき、山形市内の着物散歩、それから「七日町御殿堰」でサイン会を行わせていただきました。

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サイン会に来てくださった「和塾」の先生方。「『色っぽいキモノ』を読んで、縞のキモノで着ましたよ~」と言ってくださって嬉しかったです♪ (横山さんに撮影していただきました)


蔵レストラン「classic caffe」でのワインパーティにて。(以下の写真はすべて田原純一さんに撮影していただきました)

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鈴木ゆかりさん(左)と、なぜか驚いている私(笑)。

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すごく綺麗に結っていただいて感激のヘアセットleft

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すごく綺麗に結っていただいて感激のヘアセットtop

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すごく綺麗に結っていただいて感激のヘアセットright

あ、キモノについては「山形でトークイベントを行いました。その1 ~9月の単衣キモノについて」をご覧下さいませ☆



そんなわけですが、お忙しいなかいらっしゃってくださった皆さま、お力をお貸しくださった皆さま、本当にありがとうございました!!!! 

まだ3日目のこと書いてないので、「その3」に続きます~



—— 関連記事 ——


■ 「山形でトークイベントを行いました。その1 ~9月の単衣キモノについて

■ 「9/10・11 山形県「広重美術館」「清風荘」でトークイベントを行います。




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