先月6/26、給湯流茶道presents「黒光りアサイン茶会」@アサヒビール「アサヒアートスクエア」にて、江戸OL着物トークショーを行いました。そのレポートを少し。
会場は、コチラのお知らせページでも書きましたが、アサヒビール「アサヒアートスクエア」は、浅草は吾妻橋のほとりにそびえる、あの金のオブジェが乗っかったビル。ユニークな通称で親しまれているこのビル、実は世界的に有名なフィリップ・スタルク氏の設計なんですよね!日本がとってもお金持ちだったほんの一時代の「記念碑的建造物」として、今後さらに価値が増すはず。今だからこそ見る価値がある、「文化遺産」のひとつ!
アサヒアートスクエアで「江戸OL着物トークショウ」を行いました。
なんだか、東京というより共産圏っぽい景色・・・。
フィリップ・スタルクと言えば、昔、マガジンハウスなどのオシャレ雑誌に、スタルクがデザインした「レモン絞り器」(→コレ)が必ずというほど載っていたのを思い出します。このエイリアンみたいなフィリップ・スタルクのレモン絞り器って、「都会のトレンディなライフ」の象徴のようになっていましたよね? 千葉の田舎の中高校生だった私は、「いい大学出て、お給料のいい会社に入って、都会で華やかな生活を送ると、こんなのでレモン絞るようになるのか・・」と、漠然と思っていました。が、実際は、私が高校を卒業する頃にバブル崩壊したので、こんなのでレモン絞る日は未だに訪れていません・・・。
下から見上げるとこんな感じ。すご~~~~~く大きいです。
『ブレードランナー』に出てくる黒い巨大な要塞ビルみたい! と思ったら、フィリップ・スタルク氏は、フィリップ・K・ディックの大ファンのようす(笑)。
今回のトークショウのお話をくださった、給湯流茶道の家元(仮)様に、「このビルの内部が、またヤバイ!」とは聞いていたのですが、た、確かにすごかったです。えと、まず、エレベーターが金色なんですよ! で、ドアの取っ手とかもいちいちデザインされていたり、壁もものすごく高そうなタイル貼りだったり、天井も高くて空間の使い方がとっても贅沢。なかでも、圧巻だったのがトイレ!!!!
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こんな感じで、浮遊感っていうか、平衡感覚を失うにはうってつけのトイレット。このみょ~~んと傾きながら伸びた鏡も、なんだか妙にポジションが高くて、背の低い私なんかは背伸びしてやっと下のほうに顔が映るシマツ(笑)。しかも、ヘンに不規則に間接照明が灯っていて、肝心の鏡にライトが当たってないので見にくいったら~~(笑)。
そんなフィリップ・スタルク・ワールドも楽しめますが、メイン会場もまた面白いんですよー。今回のイベントは、アサヒビールのメセナ事業「すみだ川アートプロジェクト2011」の一環だったのですが、そのテーマがなんと、「江戸を遊ぶ」「大田南畝」。会場には本気の江戸セットが組まれ、タイムスリップしたかのような江戸空間が出現しておりました!(~7/31まで開催中) イベント準備中のようす。↓
給湯流茶道の家元(仮)様が「給湯室」でお茶を点てている間、私はこの江戸な会場でトークショウを行わせていただきました。
トークのテーマは、「江戸OL着物ファッションライフ」について。まだまだ「キモノ=決まりごとでガチガチの世界」と思われているのが一般的かと思いますが、実は、今現在普及しているような厳格な一つのキモノ体系が決められたのは、終戦から20年ほど経ってから。じゃあその前はどうだったのか?と言うと、キモノが日常着だった時代・・・特に江戸時代においては、年齢、身分、職業によって、キモノの着こなし方は多種多様でありました。職業や身分によってキモノのルールはそのそれぞれ違っており、昔はパッと見ただけで「この人は結婚していて何歳くらいでどんな身分でどんな職業なのか」っていうのが、ある程度はわかったのです。
そうした江戸時代の代表的な江戸女タイプ(姫、奥女中、花魁、芸者、町人の娘、武士の娘、町人の女房、武士の女房など)のキモノ&オシャレの特徴について、浮世絵や昔写真などをプロジェクターで映しながら解説させていただきました。
⇒⇒ 江戸女タイプ別ライフスタイルについては、以前、「野生時代」vol.50(角川書店)で詳しく書きました。
こんな感じで、プロジェクターに浮世絵などを使って解説。上の写真のスクリーンに映っているのは、英泉えがく辰巳芸者です。
そんなわけで、かなりマニアックな内容になってしまったかと思いますが(笑)、、実際にキモノを着るようになると、こういった歴史的知識・歴史的文脈が実はかなり大事になってくると私は思ってます。
たとえば、「江戸小紋の着物」ひとつとっても、そのもともとの歴史的意味合いがわからないと、「江戸小紋の着物」をどのように効果的に活かせばいいのか今ひとつわからないのではないでしょうか。もちろん普通に楽しむぶんには、着付けの本に書いてあるくらいの基本知識でも全然OKですし、洋服の感覚で着てももちろんOKなのですが、さらにもっとその着物や柄やアイテムのもつ意味を効果的に活かしたいと思うと、「歴史的な文脈」がどうしても必要になってくると思うのです。あまりそういったことが言われていないのがとても不思議なのですが・・。
たとえば、「江戸小紋の着物」で言いますと、「江戸小紋とは、本来、武士(男性)の裃に用いられていたものだった」ということを知っていれば、「男性的なアイテムをあえて女性が着ることで、かえって粋で洒脱な色気をかもし出す効果」をしっかり狙うことができますよね。そうすると必然的に、「江戸小紋にあまりにもカワイイ帯を合わせるのは、ちょっとオカシイかもしれないな~」と考えることもできるし、「江戸小紋にあえてカワイイ帯を合わせて、ミスマッチもいいかも~」と考えることもできる。要は、「なんとなく」じゃなくて、「目的をしっかり狙う」ことができるようになるんですよね。
⇒⇒ 江戸小紋の歴史については、『江戸小紋柄図鑑 -染の里二葉苑』(STUDIO TAC CREATIVE)に詳しく書きました。
と言っても、それは「そこまで考えて着たいかどうか?」ということでもあるので、必要なければ必要ないです(笑)。それよりも、江戸時代においては、年齢や身分や職業でこんなにキモノライフが多様化していたのだ、ということを知ることで、
「な~んだ、今のキモノのルールってあんなにガチガチに決められて“これ以外はあり得ません”みたいに注意されちゃうけど、昔はそうじゃない場合もぜんぜんあったんじゃない~! キモノにもいろいろな着方があったんだな~」
と、そう思ってもらえたらいいな、と。いったん、現代のキモノ・ルールを脱構築(!)して、新たに自分流に組み立てなおすきっかけになればいいなと、いつもそう思っています。
6月末で暑かったので、一足先に夏のキモノを着ました。紗のキモノに紗の帯です。
ちなみにこのキモノ、写真だと紫色に見えますが、実際は紫がかった紺色なんです。ライトが当たると、こんなに色が違って見えるものなのですね~。
と、そこで思い出すのが、かの新派の名優・花柳章太郎の著書『わたしのたんす』に記されていたエピソード。拙著『色っぽいキモノ』でも触れました(P53)が、花柳章太郎は、泉鏡花の名作『滝の白糸』の白糸役を当たり役にしていましたが、このとき、紺色の浴衣はライトが当たると紫色に見えてしまうので、黒の浴衣を着て舞台に出るのを常としていたんだとか。これを読んだときは、「フーンそんなものかな」と思っていたのですが、図らずも自らそのことを実感し、「おおホントだったー!」とちょっと感動したのでした(笑)。
そして、髪型は、ちょっと珍しくボブ風に。去年、『みんな大好きアヒル口』に載せていただいた際(→コレです笑)、ヘアメイクさんにこのボブ風に結ってもらって気に入ったので、今回もそういう感じにしてもらいました。襟も幅を広めに出して、全体的に「大正ロマン風」のつもり、です(あくまでもつもりですので・・)。
当日は、着物雑誌『和の生活マガジン 花saku』編集部のご好意により、『花saku』最新号(7月号)をご来場くださった皆さまにプレゼントさせていただきました。(編集部の皆さま、ありがとうございました!)
⇒⇒ 「着物雑誌『花saku』最新号でインタビューを受けました。」
また、お忙しいなかトークショウにいらしてくださった皆さま、本当にありがとうございました! キモノを着ていらしてくださった方もたくさんいらっしゃって、とっても嬉しかったです!
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■ アサヒビール「すみだ川アートプロジェクト2011」@アートスクエア
7/31(日)まで連日開催中!
期間中はアートスクエア内に自由に出入りできるそうなので、
この機会にスタルク空間や江戸空間を楽しんでみてはいかがですか?