井嶋ナギの日本文化ノート

トークイベント「『カッコイイ着物姿』って何だろう?」について。

2月25日、素敵な着物ショップ「ころもや人形町本店」にて、着物ブランド「WAGU」さんのプロデュースで、月影屋」・重田なつき×イラストレーター・コダカナナホ×井嶋ナギのトークイベント、「『カッコイイ着物姿』って何だろう?」がおこなわれました。

 

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今回のトークイベントは、「カッコイイ着物姿について、歯に衣(きぬ)着せず語ろう!」・・・と方向を決めたはいいのですが、3人で何度打ち合わせをしても、結局 いつも「で、そもそもカッコイイって何よ?!」という根本的な議論に・・・。3人でいろいろな意見が飛び交った結果、以下のような結論に達したのです。

 

たとえば、着物でよく問題にされるのが、「粋・地味・シンプル」と「派手・豪華・デコラティヴ」という、相反するテイストについての議論。一般的には、「粋テイスト=カッコイイ」、「派手テイスト=野暮ったい」、という価値評価がなされがちです。でも、そうとも言えないんですよ。「粋テイスト」でも野暮ったくなることも多々あるし、「派手テイスト」でもカッコイイことも多々あるんですよね。

たとえば。粋テイストでも野暮ったくなってしまう例。「黒っぽい棒縞のお召しを細身に着付けて、帯は白の博多献上を矢の字に、素足に桐の下駄、髪は一糸の乱れもない夜会巻、紅い玉簪」・・・にした人がいたとして、そうやってバッチリ決めれば絶対に粋に見えるか? と言うと、「すべてが『粋の記号』づくしで1ミリの隙もなくて、何だかコスプレみたいっていうか、『私って粋でしょ!』と全身で訴えかけられてるみたいで、ちょっと笑っちゃう」っていう見方だってある。

たとえば。派手テイストでもカッコよくなってしまう例。今年の1月にル・テアトル銀座公演(海老蔵公演の代替公演)で見た歌舞伎役者の坂東玉三郎が演じた、阿古屋。「金糸で蝶を刺繍した仕掛け(打ち掛け)をはおり、桜と孔雀を立体的に織り出した巨大な俎板帯を前に締め、横兵庫に結った髪に挿した簪は16本」という派手デコラティヴの極致のような姿で現れるのですが、野暮ったいとかカワイイなんてものではありませんでした。カッコイイ! としか言いようのない立ち姿。さらにそんなゴテゴテの格好のまま、琴を弾き、三味線を弾き、胡弓まで弾いてのけてしまうカッコよさ!

と、こういう例を見てきて分かるのは、結局、本当の意味での「カッコよさ」というのは、衣服の表面的なテイストの問題ではない、ということなのです。まずはじめに、着る人ありき。衣服を着るその人間が、どういう人なのか? 何を考え、何を欲し、何をして、何を理想とし、どのように生きているのか? そこにまず全ての根本要素があって、それが衣服を選ぶ選択眼に反映されてはじめて、衣服についての「カッコイイ」が評価対象になるのではないでしょうか。

 

さらに言えば。「カッコイイ」は、上記のような「カッコイイ」だけにとどまりません。実は、「野暮ったい(ダサい)」も、ギリギリまで突き詰めると、カッコイイの領域に入ってくるんですよね~~、不思議 なことに。トークイベントではこのカラクリについてなんと「図解」で解説しましたが(笑)、たとえば、ディヴァインとか楳図かずお先生などがいい例で、野暮ったさも異常な熱意で徹底すると、物凄い独自の「カッコイイ」に転化する瞬間がある。

つまり、要は、「どれだけ真剣に突き詰めてるのか?」「どれだけギリギリまで突き詰めているのか?」に尽きる、と。そういうことです。で、月影屋のなつきさんが、「要するにここらへん(適度で無難なあたり)でウダウダやってんじゃないわよーッてことなのよ!」と言い放ち、その彼女自身の説得力の凄さに一同納得、だったのでした(笑)。

 

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だけど、もちろん、そこまでの本当の本当の、ある意味でレベルの高い「カッコイイ」じゃなくてもいいから、もう少し表面的な「カッコイイ」について言及してほしいんだけど・・・、ということもあるでしょう。それに対してまず言えるのは、「基本の型を習得せよ」に尽きるのではないでしょうか。

トークイベントでも、コダカナナホさんが、「“型なし”と“型やぶり”は違う」という玉三郎さんの言葉を引用しながら、「自由に個性的な絵を描けるようになるには、まずデッサンなどの基礎鍛錬が不可欠だ」というお話をされていましたが、本当にそのとおりで、結局、「基本の型」が絶対に大事だと私も思うのです。日本の伝統文化もそうですが、まず「基本の型」が自分の血肉の一部となって自然になじむまでは、「自己表現」だとか「崩し」なんて「お前さんにはまだ早いよッ!」とお叱りを受けちゃうようなものなんですよね(笑)。それが堅苦しい(型苦しい?)とも言われるゆえんなのかもしれませんが・・・、でも「カッコイイ」っていう価値判断はそういうところからしか生まれないのではないかなぁ、と私も常々思うのです。

さらに、着物の「基本」について言及しますと。着付け教室でひととおり教えてもらえる、着付けや着物のルールが着物の「基本」と思われるかと思いますが、実はそれだけではないはずなんですよ。そのほかに、着物の歴史や、流行の変遷、模様や柄の意味、文化的背景(歌舞伎、能、文学、浮世絵)などなど、着物の「基本」だけでも実はかなり深いはず・・・。なのに、着付けや着物のルール以外の、着物の歴史的・文化的な基本についてはほとんど誰も教えてくれないし、そもそも簡便な本さえない! というのが私の以前からの不満でした。ので、ほんのサワリではありますが、拙著『色っぽいキモノ』ではそういったことをまとめてみたつもりです。今回のイベントでも、浮世絵や美人画、日本映画などの資料をプロジェクターでうつしながら、歴史的・文化的な着物の基本を説明させていただき、個人的にとても楽しかったです。

 

というわけで、結論としましては、

「真剣に生きよう!」
「常に基本を大切に!」
「どうせやるならギリギリまで突き詰めろ!」

という、なんとも素晴らしい結論とともに幕を閉じたトークイベントでした(自画自賛)。お忙しい金曜の夜にもかかわらず、たくさんの方にいらっしゃっていただき、本当に感謝しております。本当にありがとうございました・・・!!!

この企画をプロデュースしてくださった「WAGU」代表の久山美樹さんのブログにも、今回のイベントのレポートが掲載されておりますので、ぜひご覧くださいませ。
「『カッコイイ着物姿』って何だろう?」

 

 

 

 

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本番前に打ち合わせ中の、コダカナナホさん(左)と、月影屋の重田なつきさん(右)。
エメラルドグリーンVSパープル!

 

コダカナナホさんは、鮮やかなエメラルドグリーンの色無地に、シルバーの無地の帯。どちらもお母様が若い頃にお召しになっていたものだそうで、まるでドレスを着ているようなスタイリッシュさ。こんな鮮やかなエメラルドグリーンで全身をまとうなんて、洋服だったらかなり難しいのに、着物だと全く違和感がない。それどころか、とってもエレガントなんですよね。着物って不思議!

会場では、WAGUselectでの連載『美女とキモノ。または、映画におけるキモノ美女の研究』の原画展示もありました。ナナホさんの絵は、とにかく「ライン」が素晴らしい、ラインの芸術!

 

 

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「たぼ」連の集合(笑)。誰のたぼが一番大きいか?! 
(註:「たぼ(髱)」とは頭の下部のふくらませた部分のこと)

左から、イベントに遊びに来て下さったイラストレーターの平松昭子さん、わたし、月影屋の重田なつきさん。

ご存知のとおり、着物の本(『平松昭子の着物事件簿』『お洒落きものイズム』)も出されている人気イラストレーターさんの平松昭子さんは、さすがの素敵なコーディネートで「昭和初期」風! 

そして相変わらずカッコイイなつき姐さんは、「月影屋」オリジナルの紫色の色無地で、背に入った一つ紋はなんとハート柄。大蛇のヘビ皮帯も、もちろん「月影屋」のオリジナルです。

 

 

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私の着物はこんな感じでした。今回は、「明治後期~大正初期のちょっといいとこの奥様」風・・・(勝手な私の脳内イメージは、映画『外科室』の吉永小百合(→詳しくはこちらへ))。

藤鼠色の一つ紋入りの色無地に、帯は小さめ&丸めのお太鼓結びにして、グッと斜めに傾けました。髪は、最近気に入っている新橋の美容室のご主人がノリノリになってくださって、かなり巨大な「たぼ」に! 「下め下めに」作ってくださったので、かなり「年増度」の高い髪形になりました(笑)。

 

 

【関連記事】

■「WAGU select」での井嶋ナギ&コダカナナホの連載(毎月1・15日更新)
美女とキモノ。または、映画におけるキモノ美女の研究
3/1に新しいコラムが更新されております! 25回目は『女系家族』!! 大阪船場の3姉妹(京マチ子ほか)とその強欲な叔母(浪花千栄子)、 抜け目のない番頭(中村鴈治郎)、金大好きな踊りの若旦那(田宮二郎)、そして色っぽい元芸者の妾(若尾文子)の、カネをめぐる闘い! 下品で強欲なババァを演じたら天下一品の浪花千栄子が最高!!!です。

■着物と和雑貨のセレクトショップ
WAGU select

■「WAGU」代表クリエイティヴ・ディレクター久山美樹さんのブログ
今日、この頃

■コダカナナホさんのイラスト作品集
筆うつつ、歌舞伎ピュアネスカラー
Nanaho’s Line

■月影屋のサイト(通販アリ)
月影屋

■トークイベントの様子を「月虹」の月枝さんがレポートしてくださいました!
 「色っぽいキモノ★トークナイトへ

 

 




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