井嶋ナギの日本文化ノート

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山形でトークイベントを行いました。その1 ~9月の単衣キモノについて


蒸し暑いですね!! 9月半ばにきて、さらに蒸し暑さがエスカレートしている気がする東京の秋。キモノをしまっている棚に置いた除湿剤タンクも、すぐに水が満杯になってしまうシマツ。冬も寒くて嫌だけど、夏もこれじゃあホント参るな~って、秋か。春は春で花粉症で半死状態だし。生きるってタイヘンなことですね。


そんなことはいいとして。以前よりコチラでお知らせしてましたが、9/9~11にかけて山形市・天童市でキモノトークイベントを行いました。主催の鈴木ゆかりさん始め、ご協力くださった皆さま、イベントにいらしてくださった皆さま、本当にありがとうございました! そのレポートを何回かにわけて書きたいと思います。まずその1は、単衣のキモノについて。




今回の山形行きにあたって、私が一番悩んだのはほかでもない、キモノのことでした。せっかく皆さんに来ていただくのですから3日間同じキモノを着るわけにはいかないので、3パターンのキモノ&帯セットを持っていくのはいいとして、問題は「夏ものを持っていくか? 秋ものを持っていくか?」。そう、9月9~11日という時期は、「残暑はキビシイけど、暦の上ではもう秋」…というキモノを着る者にとって「魔のシーズン」ですから(笑)。


えと、キモノルールに詳しくないという方のために解説しておきますと、キモノには「季節のルール」というものがあります。10月~翌5月までは「袷(あわせ)」という裏地のついたキモノ、6月は「単衣(ひとえ)」という裏地ナシのキモノ、真夏の7・8月は「浴衣(ゆかた)」か「薄物(うすもの)」という透けるキモノ、9月は「単衣(ひとえ)」という裏地ナシのキモノ、というように季節によってキモノの種類が決まっています。…とは言うものの、9月もまだまだ夏みたいなものですから、関東では9月半ばまでは夏ものでOK、ということになっているのが一般的です。

さらに言えば、キモノと同じように帯にも「季節のルール」があるのですね。上にも書いたように、9月のキモノは「夏のキモノ」と「秋のキモノ」が共存していますが、9月の帯も「夏の帯(絽や紗)」と「秋冬の帯(芯の入ってない八寸帯や塩瀬など)」の両方が共存しているのです。


で。キモノと帯がそれぞれ独立していれば話はシンプルなんですが、なんと、キモノと帯は一緒に身につけなきゃいけないんですよ! って当たり前ですが。この「9月における、キモノと帯の(季節の)組み合わせ」に関しては、人それぞれ意見が異なっていて、統一されたルールは特にないようなんですよねぇ。地域や職業によっても違うのでしょうし。

私に関して言えば、「帯で季節を先取りする」という昔からの風習?についていろいろな方から聞いていたので(←中村勘三郎夫人である波野好江さんの『初めて買うきもの』にもそう書いてありました!)、9月初旬はまだ全身夏アイテムの「夏のキモノ」+「夏の帯」でいいけれど、9月中旬になったら夏と秋がミックスされる「夏のキモノ」+「秋の帯」となり、9月下旬になってついに全身秋アイテムの「秋の単衣のキモノ」+「秋の帯」となる、というふうに変化していくのが本来だと思っていました。

が。「夏のキモノ」+「秋の帯」とは逆の、「秋の単衣のキモノ」+「夏の帯」という組み合わせもOKなんですよね。この場合、「帯が季節を先取りする」という昔の風習は無視されているようですけれど(笑)。でもむしろ今はこっちのほうが主流のようで、つい最近の「歌舞伎美人」サイト内「これでわかった!残暑をのりきる「単衣」」というコーナーでは、9月になったら「秋の単衣キモノ」が基本と言い切っちゃって、上旬のうちは「夏の帯」&「夏の小物(帯揚げ・帯締め・襦袢・半襟)」を、下旬になったら「秋冬の帯」&「秋冬の小物(帯揚げ・帯締め・襦袢・半襟)」を合わせましょう、と解説していました。これはスッキリわかりやすくていいですよね!

ちなみに、家庭画報の『きものに強くなる ~きものの基本と着こなし』を見ると、9/9の重陽の節句までは「夏の薄物のキモノ」+「夏の帯」を、9/9を過ぎたら「秋の単衣のキモノ」+「秋の帯」を、と書いてありますが、そこに添えられた写真は「秋の単衣のキモノ」+「夏の帯」でした。要するに9月あいだは、キモノが夏で帯が秋でも、キモノが秋で帯が夏でも、どちらでもよいということなのでしょう。もちろん「帯で季節を先取りするのがオシャレ」としていた人々(江戸っ子?クロウト?)もいたのでしょうけど、たぶん普通の感覚ではどちらでもOKだったのではないでしょうか。


にしても、どうしても疑問に思ってしまうのが、キモノを着ていた昔の人ってみんなこんな厳しいルールを守っていたの? ということですよね。おそらく、こうしたルールというのはあくまでも「基本」であって、これに基づいたうえで臨機応変に対応すればいいんだよ、というのが「規則と例外は表裏一体」ということをリアルに知っていた時代の日本人の感覚だったんじゃないかな、と思うのです(もちろん、儀礼や規則そのものが目的化していたような階級や職業の人はまた別ですが)。なので、なにか改まった場所ではなく、フツウに遊び着として着るなら、9月中旬になっても夏キモノでもOK、というのはもう誰もが言っていることなので私が言うまでもないですよね。



というわけで、9月でも夏ものを着ることに躊躇しない私ですが、今回はトークショウを行わせていただくという立場なので、やはりルールを意識して、単衣を着ることにいたしました!


■ 9月9日 
お召しの単衣キモノに、絽の昼夜帯。


キモノは秋、帯は夏。
帯揚げと半襟は、帯の季節(夏)に合わせて、絽です。
帯は唐獅子に牡丹のもようで、帯留めも牛車に牡丹の竹細工にしてみました。
(左写真はAkiraTimesさんからいただきました)



■ 9月10日 清風荘でのトークイベント
一越縮緬の単衣キモノに、絽綴れの帯。


キモノは秋、帯は夏。
帯揚げと半襟は、帯の季節(夏)に合わせて、絽です。
少しでも涼しく見えるよう、帯留めはカットガラスのものにしました。
(左写真は田原純一さんよりいただきました)




■ 9月11日 広重美術館でのトークイベント
縞の単衣キモノに、博多献上の八寸帯。


ついに、キモノも秋、帯も秋。
帯の季節(秋)に合わせて、帯揚げは錦紗、半襟は塩瀬です。
帯留めは、龍のかたちの細工ものです。
ジミめなコーディネートなので、襦袢(半襦袢と蹴出し)は赤にしてみました。
(左写真は田原純一さんよりいただきました)



というわけで、今回は「単衣のキモノ」について長く書いてしまったので、次回は、山形でのトークイベントについて、そして山形の魅力について、たっぷり書きたいと思います! 続く・・・



—— 関連記事 ——


■ 山形でトークイベントを行いました。その2 ~「ファッションとしてのモダンキモノ史」についてなど。
■ 「9/10・11 山形県「広重美術館」「清風荘」でトークイベントを行います。

■ 「アトリエのあ
  今回のイベントを企画・実行してくださった、
  「アトリエのあ」主催の鈴木ゆかりさんのブログです。
■ 「天童観光情報センター
  天童市「広重美術館」でおこなわれたトークイベントについて
  レポートしてくださいました。
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