井嶋ナギの日本文化ノート

サイトをお引っ越しいたしました!

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2017年新年早々、旧サイト「色気と超人」から、コチラにお引っ越ししました。名付けて、「井嶋ナギの日本文化ノート」です。

実は、旧サイト「色気と超人」はwordpress で地道に作っていたのですが、正直言って、wordpressのメンテナンスなど少々重荷になってまして…。思い切って、はてなブログにお引っ越しを決意。

旧サイトのドメイン nagi-ijima.com は、そのまま引き継いでおりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!


というわけなのですが、実は、よく把握しないまま移転作業を急いでしまったため、なんと、googleのインデックス(googleで検索したら出てくるランキング等)の引き継ぎに失敗してしまいました…(泣)。すこし(いや、だいぶ)悲しいです。

気を取り直して、またゼロから新ブログをスタートしようと思っていますが。ひとまず、自己紹介代わりに、旧サイトで特にアクセスが多かったページを、幾つかご紹介させていただきますね。よろしかったら、ぜひぜひ覗いて行ってくださいませ〜!




【建築】
■ 飛田新地「鯛よし百番」にて、大正期の遊廓建築を見る。その1
■ 飛田新地「鯛よし百番」にて、大正期の遊廓建築を見る。その2
■ 飛田新地「鯛よし百番」にて、大正期の遊廓建築を見る。その3 もしくは、江戸〜戦後にかけての大坂の遊郭の歴史。


【浮世絵】
■ 【日本を知るための100冊】007:飯島虚心『葛飾北斎伝』 〜北斎の強烈すぎる自負心と、そのエピソードについて。
■ 北斎80歳代の超人ぶりについて。 〜長野県小布施にて、北斎の肉筆画を見た記。
■ 「肉筆浮世絵展」に行ってきました。 〜英泉のアバズレ美と、表装の美。


【映画】
■ 太地喜和子ストリッパー3部作、『喜劇 男の泣きどころ』『喜劇 男の腕だめし』『喜劇 女の泣きどころ』のススメ。
■ 早稲田大学オープンカレッジ講座「名作映画に描かれた日本の美と享楽の世界」レポートです。 〜任侠映画講座、開催しました!
■ 仁侠映画について、その2。『緋牡丹博徒』での華麗なる手本引き、もしくは、ややこしい任侠映画タイトルを整理する。
■ 仁侠映画について、その3。 博奕と893の歴史について、もしくは修行を愛する日本人論。


【歴史 - 日本史】
■ 今更ですが、大河ドラマ『平清盛』を見ましたの記。その1 〜平安時代末期と妖しい人間関係を楽しむ!
■ 今更ですが、大河ドラマ『平清盛』を見ましたの記。その2 〜王家=天皇家の人々の「闇」っぷりが凄い!
■ 今更ですが、大河ドラマ『平清盛』を見ましたの記。その3 〜今度こそよーーくわかる保元の乱!


【キモノ】
■ 長野須坂「豪商の館・田中本家」に行ってきました! 〜婚礼衣裳としての打掛けについて。
■ 上村松園の描くキモノは意外と「粋」好み? 〜長野市「水野美術館」にて。


【歌舞伎】
■ 歌舞伎座「一幕見席」のススメ。もしくは、4階当日券の購入方法について。
■ 踊りを「体感する」ということ。 〜『京鹿子娘五人道成寺』『二人椀久』in 歌舞伎座
■ 玉様&七之助の『二人汐汲』 〜もしくは、あまちゃんと汐汲みの謎について。
■ 「大阪松竹座」「新歌舞伎座」の建築様式と、関西歌舞伎の栄枯盛衰について。


【日本を知るための100冊】

■  01:岡本太郎『日本の伝統』
■ 002:山崎正和『室町記』 ~乱世を生き抜くための秘訣について。その1
■ 002:山崎正和『室町記』 ~乱世を生き抜くための秘訣について。その2
■ 003:折口信夫『日本藝能史六講』 ~鎮魂と快楽の足拍子について。
■ 004:岩下尚史『ヒタメン 三島由紀夫が女に逢う時…』 ~「何か決定的なもの」をめぐって。
■ 005:宮尾登美子『錦』 ~「正倉院模様」の謎と、帯ブランドの最高峰「龍村」について。
■ 006:高遠弘美『七世竹本住大夫 限りなき藝の道』  〜年齢を重ねることで到達できる領域について。
■ 007:飯島虚心『葛飾北斎伝』 〜北斎の強烈すぎる自負心と、そのエピソードについて。




そのほかの記事については、以下をご覧くださいませ。



今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます…!

歌舞伎座「一幕見席」のススメ。もしくは、4階当日券の購入方法について。



先日、今月の歌舞伎座が素晴らしすぎた〜!という記事を書きましたが(→「踊りを「体感する」ということ。 〜『京鹿子娘五人道成寺』『二人椀久』in 歌舞伎座」)、昨日、ふたたび同じ踊りを見てきました! 今回は「一幕見席」で。そう、前回の記事で、最後のほうでチラッと触れた「一幕見席」です。

実は、この「一幕見席」、知っている方が意外と少ない、ということに最近気が付きまして。「それはもったいないことだなぁ」と心底思い、勝手に一幕見席普及委員会発足(会員は私だけ)。そんなわけで、今回は「一幕見席」についてご紹介したいと思います!(もちろん、歌舞伎に詳しい方は「そんなこと知ってるよ」ということばかりですので、どうぞスルーしてくださいませ…)



一幕見席って、なに?


一幕見席(ひとまくみせき)」とは、文字通り、「(すべての幕ではなく)ひと幕だけ見る、ということができる席」のこと(「幕見席(まくみせき)」「幕見(まくみ)」とも言います)。

たとえば、12月歌舞伎座の第三部では、『二人椀久』と『京鹿子娘五人道成寺』の2演目が上演されていまして、通常のチケットを買った場合、この2演目を鑑賞することになります。一方、「一幕見席」で、となると、『二人椀久』だけ見る、または『京鹿子娘五人道成寺』だけ見る、もしくは両方とも見る、といったことがそれぞれ可能になるんです! これ、すごい親切ですよね? だって、「すべて見るのはおっくうだけど、一つだけなら見てみたいな」という「ワガママなツマミ食い」が許されるんですからー。ありがたや〜。

その代わり、いろいろと制約はあります。


「一幕見席」のルールは、以下。


当日券のみ。予約はできません。

自由席のみ(90席)。指定席はありません。早いもの順です。

■ 自由席が確保できなかったら、立ち見(約60人)になります。→ペタンコ靴必須!

■ 「一幕見席チケット」は、いつでも買えるわけではありません。幕ごとに、「一幕見席チケット」の販売開始時間が設定されています。なので、おめあての幕の「一幕見席チケット」の販売開始時間まで、歌舞伎座の外で並んで待ちます。→冬は防寒具必須!夏は水分必須!

■ 同一「部」内の連続した幕であれば、まとめてすべての幕の「一幕見席チケット」を買うこともできます。(つまり、今月の第三部なら、第三部内のすべての幕のチケットを、最初にまとめて買うことも可能)

■ 「一幕見席チケット」には番号がふってあります。最終的には、番号順に入場します(公平です)。

4階席、いわゆる「天井桟敷」です。→オペラグラス必須!

価格はリーズナブル。一幕につき1000円ほど。長い演目だと一幕2000円も。

チケットは本人分のみ。他人のチケットは購入不可です。



というルールになっております! どうでしょう?(結構、慣れるまでフクザツですよね…)



いざ、一幕見席で歌舞伎を見てみよう!


ふーん。でも、イメージが湧かない…という方のために、カンタンに、バーチャル一幕見ツアーを以下に開催!


まずは、おめあての幕の「一幕見席チケットの販売時間」知ることが大事です。歌舞伎座では毎月、上演演目が替わるので、月の初めになると、サイト「歌舞伎美人」にて「幕見席の案内」が発表されます。まずは、チケットが発売される時間をチェックしましょう!

↑ こんな感じで、「一幕見席チケットの発売時間」をサイトで確認。幕ごとに、「一幕見席チケットの販売時間」は異なります!



いざ、歌舞伎座へ!

「一幕見席チケット売り場」は、歌舞伎座の正面左側にあります。




窓口の上に「一幕見席切符売場」とあります。

↑ 係の人が立っているので、わからなかったら聞いてみるとよいです(とても親切です)。



ここが、「一幕見席の入口」です。

↑ 左のほうに、「一幕見席チケット」が発売されるのを待っている人たちが、並んでいます。赤い毛氈を敷いたベンチを出してくれるので、座って待つことができます!(昔は、ベンチは4,5人分しかなくて、あとは全員立ったまま並んでたんですよ…スパルタだった…)

ちなみに、「一幕見席チケット」販売開始時間より、どれくらい前に並んでいればいいのか?問題ですが。平日でしたら、「一幕見席チケット」販売開始時間より、20〜30分前に並べば、席は確保できるかと思います(土日はもう少し早く行ったほうがいいかも)。

ただし、注意すべき点があります。「一幕見席」では、一幕だけでなく、複数の幕を続けて見ることもできます(これを「通しで見る」と言います)。この場合、複数の幕の「一幕見席チケット」を、あらかじめ先にまとめて買うことができちゃうんですね(これを「通しで買う」と言います)。…ということは……、もしアナタが途中からの幕の「一幕見席チケット」を買いたい場合、「それ以前の幕からずっと見続けている人が結構いるかもしれない…」「その場合、既に席が埋まってるかもしれない…」ということを考慮に入れて、並ぶ時間を決めたほうがいいかもしれません。

特に、人気役者や人気演目の場合は、できるだけ早く並ぶに越したことはありません。もしくは、安全策をとって、最初から「通し」で見たほうがいい場合も…。

ちなみに昨日、私は幕見席で『二人椀久』『京鹿子娘五人道成寺』を通しで見ましたが、『二人椀久』だけ見て帰った人は、ほっっとんどいませんでした…(つまり、ほぼ皆さん「通し」で見ていたということ)。『京鹿子娘五人道成寺』から来た方は、立ち見になった確率高いです。でも、まぁ、今月は玉さま舞踊公演なんで(笑)かなり特殊事例かと思いますが…。



で、「一幕見席チケット」販売開始時間になったら、並んでいる順に、切符売場窓口でチケットを購入します。通しで見たい場合は「通しで」と言いましょう。

↑ 私が昨日購入した「一幕見席チケット」。『京鹿子娘五人道成寺』は豪華演目のため、ちょいお高めの2000円。『二人椀久』は30分くらいですので、1000円でした。最終的には、ここに記された番号順に入場することになります。


チケットを無事購入できたら、ひとまず、その幕の上演開始時間の20分前になるまで、時間をつぶしましょう。近場では、歌舞伎座のすぐとなりに、プロントがありますよ(混んでますが)。


上演開始時間の20〜30分前になったら、先ほどの「一幕見席入口」から歌舞伎座に入ります。

赤いエレベーターで「4階」へ!(昔は、ひたすら急勾配の階段をのぼらされたんですよ…スパルタだった…)。

4階に到着すると、係の方が「チケットに記されている番号順に並んでください」と指示してくれます。しばし、ロビーで番号順に並んで待ちます。ちなみに、ロビーはふっかふかのカーペット敷きなので、立っていてもそれほど疲れません。


さて。いよいよ、入場です!

番号順に劇場内に入ります! 椅子取り合戦です!!!

…というのは大げさです(笑)。番号順に入場するので、心配ご無用です。


↑ 一幕見席のようす。あまり良い写真でなくてすみません。天井に限りなく近いですね。

一幕見席の椅子は、通常の席と同じ、ふかふかの上質の椅子です(昔は、硬いベンチしかなかったんですよ…スパルタだった…)。椅子席は2列です(90席)。

立ち見の場合は、(左写真のように)椅子席の後ろに立って観劇します。実は、立って見るとよく見えるので、疲れないスニーカーとかでしたら、意外とオススメです!




そのほかの注意事項としては、以下。

「通し」でチケットを買った場合
「通し」で続けて見る場合、そのまま同じ席にいてOK。ひとつの幕が終わると、係の人が「次の演目もご覧になる方は、次の幕見席チケットをお見せください〜」と言って、チケットをチェックしに来てくれます。

オペラグラス絶対必須!
歌舞伎座内ではオペラグラス貸出しはありますが、一幕見席でのオペラグラスの貸出はありません(昨日知りました)。ただし、限りなくオモチャに近いオペラグラス(3倍)は売っています。が、昨日購入されたお友だち曰く、「ほとんどピントが合わない」とのことでした…(泣)。

筋書きは売っています
筋書き(プログラム)は売っています。舞台写真(ブロマイド)やグッズは売っていません。

イヤホンガイド・字幕ガイドあります
難しそうな演目のときには、イヤホンガイドや字幕ガイドも借りられます(有料)。英語版もあるので、海外の方でも安心。

ドリンク自販機はあります
ドリンクは買えますが、食べ物は売っていません。昼や夜のごはんタイムに重なる場合は、コンビニでおにぎりやパンを買って、幕間(休憩時間)に食べるとよいです。歌舞伎座は、国立劇場などと違って、座席で飲み食いしてもOKなんですよ。ステキ!

幕見席は4階のみです
ほかの階(1階〜3階)には入れません。幕見席チケットで入れるのは、4階のみ。

■ そのほか詳細は、松竹株式会社「一幕見席について」へ。




昔は、「一幕見席」って、「通」の人たちが多い席だったんですよね(もちろん、今もそうですが)。20年ほどの前の大学生時代、お金がなかったので、幕見席でよく見ていましたが、幕見席の端っこに、激シブな声で掛け声をかけている方がいたものです〜。絶妙なタイミングで発せられる、ノドの奥から絞り出したみたいな、カスレて、シナびた、カッサカサの(笑)、シブ〜〜い声の掛け声、あまり聞かなくなったなぁ…。

最近の「一幕見席」は、外国人観光客の方々がとても多くなっているようす。でも、海外の方だけでなく、旅行で東京を訪れる日本の方々にも、ものすごーくオススメ!(意外と知られていないみたいなので、声を大にして言いたい)

もちろん、あらかじめチケットを買っておくほうが、ゆっくり見られるので、可能ならそのほうがいいとは思います。が、そういつも前もって予定が立つわけでもないですよね…。そんな予定がたたない忙しい方や、ちょっとだけ歌舞伎を見てみたいという方にもピッタリかと。「一幕見席」で歌舞伎を見られるのは、東京の歌舞伎座だけ。ぜひチャレンジしてみてください♪






—— 関連記事 ——


■ 2016年 玉三郎×勘九郎『二人椀久』 玉三郎×他『京鹿子娘五人道成寺』を見た記事
踊りを「体感する」ということ。 〜『京鹿子娘五人道成寺』『二人椀久』in 歌舞伎座

■ 2006年 玉三郎×菊之助『二人椀久』を見たときの記事
【歌舞伎・日舞】 『二人椀久』@歌舞伎座

■ 2014年 玉三郎×七之助『村松風二人汐汲』『二人藤娘』を見たときの記事
玉様&七之助の『二人汐汲』 〜もしくは、あまちゃんと汐汲み女の謎について。

踊りを「体感する」ということ。 〜『京鹿子娘五人道成寺』『二人椀久』in 歌舞伎座


今月12月の歌舞伎座初日に行ってきました! で…これは…ちょっと…素晴らしすぎて…興奮のあまり、久しぶりにブログを書きます。


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『娘道成寺』と『二人椀久』を、
人間国宝・玉三郎丈が踊る!


今月12月の歌舞伎座は、「第一部」「第二部」「第三部」の3部制。そのなかの「第三部」初日を見てきたのですが、演目がとにかく好みど真ん中すぎて…! 第三部の演目は、以下。

■ 長唄舞踊『二人椀久』
  出演:玉三郎、勘九郎
■ 長唄舞踊『京鹿子娘五人道成寺』
  出演:玉三郎、勘九郎、七之助、梅枝、児太郎


両演目とも、お芝居ではなく、踊りです。踊り好きなら「キャー!」と言わずにおれない、そんな凄いラインナップなんですよ。このラインナップがどう凄いのか、カンタンに列挙しますと。(以下、長いので『娘道成寺』と省略して書きます)

・『二人椀久』も『娘道成寺』も、日本舞踊の超代表作!
・『二人椀久』も『娘道成寺』も、楽曲(長唄)が素晴らしい!
・『二人椀久』も『娘道成寺』も、人間国宝・坂東玉三郎丈が踊る!
・『娘道成寺』は、通常は1人で踊るが、今回は総勢5人で踊る!

これがどんな感じなのかと言うと、えーと、少女漫画と大映映画でたとえれば、『ベルサイユのばら』と『日出処の天子』の2演目を、若尾文子と岸田今日子と田宮二郎で上演! みたいな感じ(笑)。



歌舞伎になじみのない方にこそ、
「踊り」をオススメしたい理由


特に、この『二人椀久』と『娘道成寺』は、「歌舞伎を初めて見る人」や「踊り(日本舞踊)になじみのない人」にこそ、オススメしたい! と、強く主張したいです。

というのも、世間では、「歌舞伎」というと、『忠臣蔵』のような勧善懲悪なお芝居のイメージや、『暫(しばらく)』のような隈取した荒事のイメージが、あるようなのですが。……いやいや、歌舞伎って、夢のように華やかで美しいレヴューのような演目もあるし、肉体を鍛え上げたダンサーによるスリリングなダンスが見られる演目もあるんですよ!

実は、歌舞伎において、「踊り(日本舞踊)」は、「お芝居」と並んで、重要不可欠なものなんです。あまり言われていないような気がするのですが、実は、

 歌舞伎 = お芝居 + 踊り



「踊り」は、決して「お芝居」の添えものではなく、どちらが欠けてもダメなのです。

お芝居が(ある程度は)頭で理解するものだとしたら、踊りは五感を駆使して体感するもの。見る、というより、体感する、なんです。だって、踊りの演目を構成する要素は、つまり、MUSIC & DANCE ですから。とにかく、「キャ〜ウットリ〜」「うわ〜気持ちいい〜」「何だか、この音に乗って踊りたくなる〜」みたいな感じで、ただただトランス状態に浸ればいい。

そう考えると、踊りこそ、歌舞伎初心者にうってつけなのではないでしょうか? よく、「歌舞伎って難しいんでしょ?」「前もって勉強しなきゃわからないんでしょ?」と聞かれるのですが、確かに、そういう演目もありますよね。お芝居などでは、ある程度の知識(歴史的背景など)があったほうが、より理解しやすいものもある。でも、踊りに関しては、理屈じゃない。ただ音楽とダンスを体感すればいいのですから、難しいことなんてない、と思うのです。



250年以上かけて
練り上げられてきた踊りの舞台


『二人椀久』も『娘道成寺』も、非常にポピュラーな演目なので何度も見ていますが、今回しみじみと感じたことがありました。それは、目の前で繰り広げられている舞台が、何百年もかけて受け継がれ、何百人という(過去の)人間の手によって練り上げられてきた、その「長い歴史の積み重ねの結果」だということ。

たとえば、これらの演目の初演はというと、

1753年(宝暦03)『京鹿子娘道成寺』
1774年(安永03)『二人椀久』
 
つまり、『娘道成寺』は263年前、『二人椀久』は242年前! もちろん、曲も振り付けも演出も、初演当時100%そのままというわけではありません。特に、振り付けや演出は、役者や時代によっても変化します。だけど、曲に関しては、初演時につくられた曲が改訂改良されながらも、現在まで受け継がれている。つまり、250年前の江戸の人々が熱狂した音楽を、今も体感できるわけです。純粋に、ワクワクしますよね!

1750年〜1775年あたりと言えば、江戸時代中期。ザックリですが、田沼意次が活躍した、10代将軍徳川家治の時代。文化人で言えば、1750〜60年あたりに平賀源内鈴木春信が活躍し、1774年には杉田玄白・前野良沢らの医学書『ターヘル・アナトミア』出版、というあたり。(ちなみに、早稲田の講座に来てくださった方は、キモノ・髪型の形で時代をなんとなくイメージできるかと思います♪)

ちなみに、同時代の西洋の状況はと言うと、1750年にJ・S・バッハが65歳で死去、1755年にマリー・アントワネットが誕生、1756年にモーツァルトが誕生、1775年にアメリカ独立戦争。…うんうん、まさに、ロココ時代ど真ん中ですね!

たとえば、『京鹿子娘道成寺』だったら、山台にズラリと並んだ長唄連中・囃子連中の生演奏、何度聴いても聞き飽きることのない名曲、さまざまな踊りの技巧を織り込んだ振り付け。華やかでゴージャスなキモノにダラリの島田髷、何度も「引き抜き」で衣装が変わり、小道具も、中啓手ぬぐい鞨鼓鈴太鼓と変わってゆく…。

そうした光景すべてが、ここ最近のアイディアで生まれたというようなものではなく、約250年もかけて、数え切れないほどの人たちによって、磨き上げられ、練り上げられ、ブラッシュアップされてきた結果。それが、目の前の舞台で繰り広げられているということ、それを、自分が目の当たりにできているということが、奇跡のような、有り難いことに思えてなりませんでした。

舞台って、「その場」「その時」でないと体感することができない、はかない藝術だなと思います。もちろん、今は、映像という手段があります。ありますけど、でも、実際にその空間にいるのと、映像を見るのとでは、全く違う。好きなミュージシャンのライヴ映像を見るのと、実際にライヴに行くのとでは、1000万倍くらい違いますよね? それと同じなんですよね。



『京鹿子娘五人道成寺』は、
華麗な和製レヴュー!


特に、今回の『京鹿子娘五人道成寺』は、必見!

通常の『京鹿子娘道成寺』は、1人で踊るのが標準。最近では、玉三郎丈と菊之助丈による2人で踊る『京鹿子娘二人道成寺』がありますが、5人で踊る『京鹿子娘五人道成寺』なんて、今度いつ上演されるかわかりません! 5人で踊る『娘道成寺』は、旧・歌舞伎座の閉会式で1度だけ上演されましたが(私は未見ですが)、それ以外では、今回が初めてのはず。これを見逃すのは、あまりに惜しい! 

当代きっての役者たちが、入れ替わり立ち替わり現われて、踊ってくれる、この趣向、最高に楽しかったです! ただひたすら、華麗で、贅沢で、ゴージャスで、ドラマティックで、楽しい。そんな華麗な和製レヴューを体感しないのは、本当にもったいないと思うのです。


以降、ちょっと細かい話になりますが、今回の『娘道成寺』で、5人の役者たちがどのパートを担当していたのか? についてもメモしておきますね。

道行:七之助、勘九郎
問答:七之助
乱拍子・中啓の舞:玉三郎
手踊り(言わず語らぬ〜):玉三郎
毬唄(恋の分里〜):玉三郎、七之助、勘九郎、梅枝、児太郎
花笠踊り:児太郎
クドキ(恋の手習い〜):玉三郎
鞨鼓の踊り:七之助、勘九郎
手踊り(ただ頼め〜):梅枝
鈴太鼓の踊り:玉三郎、七之助、勘九郎、梅枝、児太郎
鐘入り:玉三郎、七之助、勘九郎、梅枝、児太郎


(もし間違えがありましたらすみません。今月は3回は見に行く予定なので(張り切りすぎ笑)、随時確認しておきます。)

特に、中村屋兄弟(勘九郎・七之助)がどちらも女形として2人で踊る、というのは、かなり貴重なのでは? 上記にも書きましたが、「道行」と「鞨鼓の踊り」は、中村屋2人だけで踊り、拍手喝采でした。

「道行」では、(長唄ではなく)義太夫の、「恋をする身は浜辺の千鳥〜」という歌詞のところで、お化粧をする振りがあるのですが。衿もとから懐紙を出して、口に当て、紅のついたその懐紙をクシャッと丸めて、ポイッと観客席に投げるんですよ〜! おお〜〜っとどよめき発生(花道の西側のほうに飛ばしてました。いいなぁ〜)。玉様と菊之助の『娘二人道成寺』では、それはやっていなかったと思いますが、江戸時代にはそうした観客サービスをしていたそうなので、復活させたのかもしれません。

「鞨鼓(かっこ)の踊り」では、勘九郎と七之助の踊りのクセの違いがわかるのも、すごく面白かったです。勘九郎は普段は立役だから、女形の踊りでも、腕の動かし方とかすごく動きが大きいなぁとか。七之助は何から何まで可憐で可愛くて、「ふつうに町娘」みたいだなぁ、とか。

それから、『娘道成寺』で一番の見せどころなのが、「クドキ」の部分。甕のぞき色の絹の手ぬぐいを手に、玉様が、しっとりと踊ります。いや…、踊るというか、もう、「存在している」という感じ。場内、水を張ったようにシーーーンとして。皆が息をとめたように、静かに、玉様の動きを見つめる、そんな「玉様劇場」。そんななか流れる長唄の歌詞は、「悋気(りんき=嫉妬)」だとか、「殿御(とのご)」が「悪性(あくしょう)」だとか、「恨み〜〜恨〜みて〜〜」だとか、かなりドロドロ(笑)。でも、玉様が踊ると、なにか「神聖・玉様劇場」に見えてくる不思議。



kabukiza2016



というわけで長々と書きましたが、「でも、もうチケットとれないんでしょ?」と、思った方もいらっしゃるかもしれません。さっき確認してみたら、普通のチケットは(第三部に関しては)、二等席(11000円)より上の席しか残っていませんでした。

でも、当日ふらっと行って格安で見ることもできるんですよ!(立ち見の可能性もあり) それが、「一幕見席」。今月の一幕見席についての案内は、コチラ。歌舞伎座のサイトに「一幕見席について」という説明もあります。これについて解説するとさらに長くなってしまうので、改めて書きたいと思います〜! 

追記。一幕見席について書きました!
→「歌舞伎座「一幕見席」のススメ。もしくは、4階当日券の購入方法について。






—— 関連記事 ——


■ 日本舞踊や能狂言における「足踏み」「リズム」の気持ちよさについて書いた記事
【日本を知るための100冊】003:折口信夫『日本藝能史六講』 ~鎮魂と快楽の足拍子について。

■ 2006年 玉三郎×菊之助『二人椀久』を見たときの記事
【歌舞伎・日舞】 『二人椀久』@歌舞伎座

■ 2014年 玉三郎×七之助『村松風二人汐汲』『二人藤娘』を見たときの記事
玉様&七之助の『二人汐汲』 〜もしくは、あまちゃんと汐汲み女の謎について。

「KIMONO姫」No.14に、泉鏡花についてのエッセイを寄稿しております。


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お知らせです!

キモノ雑誌『KIMONO姫』最新号(No.14)にて、エッセイ「日本の美しい、魔法の呪文」を寄稿させていただいております!
 

KIMONO姫』最新号のテーマは、メイドインジャパン編! ということで、「日本の美についてなにか!」と編集長様におっしゃっていただき、思いついたのが、泉鏡花の美しい文章でした。鏡花の文章はどれも本当に、宝石をちりばめたように美しいのですが、なかでも美しくてすこし怖い、そして、キモノやファッション描写もたっぷりある『眉かくしの霊』を例にとりあげてみました。

日本に生まれて、日本で育って、日本語で生きてきて、よかった

と思わずにいられない、そんな体験についてのお話です。ぜひ、ご覧いただけたら嬉しいです!




それにしても、『KIMONO姫』今号も、可愛いキモノコーディネートがてんこ盛りです♪

個人的には、巻頭グラビアでモデルちゃんが着ていた「MODERN ANNTENA のジャージ風ツーラインの無地キモノに、ゴールドのリーボックの厚底スニーカー」というスポーティなコーディネートが、かなり好み! あれ、カワイイな〜。

実は私、ジャージというものが、素材も、形も、大好きです。体操着みたいなスタイル、たまりません。ブルゾンとかスカジャンみたいな形のアウターも好きすぎて、同じ形のものばっかりいくつ買ってんだよ、っていう…(あの、たまに、普段着で会うと「えっ…なんか…イメージ違う」とか言われてしまうことがあるのですが、キモノのほうが私にとっては「特別」でして…)。

あと、桜井日奈子ちゃんが「キモノ×エプロン×たすき掛けで、お掃除コス」をしているページがあるのですが。あまりに可愛くて、しばし、ジーーーッと眺めてしまいましたね…。一体、何が違うんだろう?と思って(笑)。美少女って、すごいな…。






それと、泉鏡花関連・出版関連にかこつけて、もうひとつお知らせを。

2013年に、泉鏡花の『雪柳』という作品についてのエッセイを寄稿させていただいた、『冬の本 』(夏葉社)という本が、先日、増刷されたとのことです! この本、84人によるオススメの「冬の本」についてのエッセイを集めた、とても贅沢でカワイイ本なんです。


しかも、書き手のラインナップを見てビックリですよ、山田太一、角田光代、又吉直樹、片岡義男、池内紀、木内昇、と、ビックネームがズラリ(敬称略)。なぜ私がそこに入っているのか、、はい、自分で思ってます…。

とにかく、ちょうど今の季節にピッタリです! ぜひ、ご覧くださいませ。





—— 関連記事 ——


■「『冬の本』(夏葉社)が出版されました。もしくは、衝撃的な読書体験について。

■ 2014年におこなった、"日本文学に描かれたキモノ"を探る講座について
早稲田大学オープンカレッジ「着物で読み解く名作日本文学 〜夏目漱石から、泉鏡花に永井荷風、有吉佐和子まで」のお知らせ

■ 「中目黒KAPUKI制作「かぷき本」のお知らせです。

■ 「「キネマ旬報」にて、若尾文子作品のキモノについて書いております。

■ 「キネマ旬報社刊『女優 夏目雅子』に寄稿しております。もしくは、『鬼龍院花子の生涯』を見よ!!!!

「下北沢映画祭」キモノ×映画 トークイベントのお知らせ




第8回 下北沢映画祭にて、トークゲストとして参加することになりました。ぜひぜひ、いらっしゃってくださいませ♪ 




第8回 下北沢映画祭
映画が繋ぐ、着物との縁。

日時:10/9(日)13:30〜(開場13:15)
場所:しもきた空間リバティ
   世田谷区北沢2-11-3 イサミヤビル4F →MAP
   (1Fは「ABCマート」です)
チケット:2000円 →購入はコチラ
   (キモノでご来場の方は、300円キャッシュバック!)

下北沢映画祭


上映作品:『化粧師』(2002年)
監督/田中光敏 原作/石ノ森章太郎
出演/椎名桔平、菅野美穂、柴咲コウ、池脇千鶴、いしだあゆみ

トーク:前田エマさん(モデル/アーティスト)× 井嶋ナギ(文筆家)

協賛:下北沢のアンティーク着物店「着縁
詳細:下北沢映画祭HP




というわけで、皆さま、「キモノ×映画」のイベントですよ〜〜! 今までさんざん、キモノと映画の関係について、講座で喋ったりブログで書いてきた私としましては、こうしたイベントに参加できるのは嬉しいです。実行委員の方も、コダカナナホさんとの企画「美女とキモノ」をご覧くださってお話をくださったそうで、光栄の限り。
 
当日は、映画『化粧師(けわいし)』(2002年)が上映されます。この映画、大正時代を舞台にした作品で、さまざまな階層の女性たちがキモノで登場するので、それこそ私が講座でやっているような「人物像別のキモノ」を学ぶのにもピッタリ! 私は、この作品に登場する、いしだあゆみの大人ロマンティックなキモノ姿に、憧れますねぇ…。ちょっと竹久夢二な雰囲気の、いしだあゆみの艶姿が見られますよ。
 
そして、主役の椎名桔平が、若い! あの頃の椎名桔平、カッコよかったですねー。私が初めて椎名桔平を発見(笑)したのは、新卒で入ったばかりの会社員時代、仕事がイヤでイヤで会社わざわざ休んで東京映画祭に行って、偶然見た『新宿黒社会』でしたね……。いや、あの作品は衝撃的だったなぁ……三池崇史監督の劇場映画デビュー作だったと後で知りましたが。って、関係ない話ですが。

そして、映画上映後は、モデル・アーティストの前田エマさんとわたくし井嶋ナギで、トークを行う予定です! どのようなイベントになるのか、私もとても今からとても楽しみです。しかも、キモノで来場されると300円キャッシュバックという嬉しい特典もあるとのことですよ!

さらにさらに。ちょうどその時期は、下北沢カレーフェスティバル2016が開催中なんだそう! カレー好きにはたまりません。夜ごはんは、ぜひ下北沢で美味しいカレーを食べて帰りましょう♪ 





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